「マイクロカプセル」という言葉を聞いたことがありますか?
マイクロカプセルは、私たちが日常的に使用している、洗濯や化粧品など、さまざまな製品に使用されています。しかし、そのマイクロカプセルが引き起こす健康被害や環境への懸念については、あまり知られていないかもしれません。
便利さとその効果とは裏腹に、マイクロカプセルには潜在的なリスクが存在します。具体的に見ていきましょう。
マイクロカプセルとは?
マイクロカプセルは、その名の通り非常に小さなカプセルであり、微細なサイズの物質を包み込むことができます。一般的に直径が1マイクロメートル(1μm)から数百ミクロメートル程度と言われています。
マイクロカプセルは、様々な目的で使用され、構造や材料によって異なる特性を持ちます。
マイクロカプセルは、壁材(カプセル)と芯物質(コア)から構成されます。壁材は一般的に合成樹脂などの材料(メラミン樹脂やウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレア樹脂等)で作られ、芯物質は固体、液体、または気体の形態を取ることがあります。芯物質には、医薬品、香料、着色剤、農薬、化粧品の成分など、さまざまな物質が封入されることがあります。これにより、物質を保護するだけでなく、時間や場所によって物質を放出することが可能になります。
この放出を「徐放」と言い、マイクロカプセル化のような工夫を「徐放技術」と呼びます。
マイクロカプセルのメリット
マイクロカプセルのメリットと言われるものは、以下のようなものがあります。
- 物質の保護:マイクロカプセルは、壁材によって物質を外部の要素(酸素や湿気、光などの影響)から保護します。これにより、物質の品質や安定性を維持することができます。
- 物質の制御放出:壁材の性質によって物質の放出を制御できます。特定の条件や時間に応じて、ゆっくりとまたは反応的に物質を放出することができます。この制御放出は、医薬品の効果を調整したり、香料や着色剤の持続性を向上させたりするのに役立ちます。
- 機能性の向上:物質の特性を向上させるために使用されます。例えば、医薬品の安定性を向上させたり、標的部位での効果を増強したりすることができます。また、化粧品や食品において、マイクロカプセルは成分の保護や配合技術の向上に寄与します。
これらの”メリット”と呼ばれるものにより、マイクロカプセルは、衣料品、化粧品、医療製品、食品、農業などのさまざまな分野で使用されています。
そこらじゅうに広がるマイクロカプセル
電車内に浮遊しているマイクロカプセルを調べられた方がいらっしゃいます。小さな範囲でもたくさんのマイクロカプセルを捕集され、その様子を綴っています。
一般の浮遊ごみはごく僅かで、ほとんどが透明なマイクロカプセルでした。電車の中ではこれを吸い込んでいる訳で、我々敏感な人は咳が出たり頭痛がするのは当たり前の様に感じました。
また、カプセルの大きさは小さい物が主体で、衣類に付いたカプセルの剥がれた物は数十μとその中身の数μという事が分かりました。自宅ではもっと大きなカプセルが見られますが、これは干した洗濯物から飛んできていると推定されます。また、この画像を自宅のと比べて、自宅の外気は満員電車の中より数倍もカプセルが多い事に驚きです。
受動喫煙どころではない電車車中の香害:マイクロカプセルだらけ
肉眼では見えないサイズのマイクロカプセルを、このように実際に顕微鏡で見てみるとその恐ろしさがよくわかります…上記の自宅の外気についての記事の要約は、以下の通りです。
我が家の空気は、窓を開けているとMAXで2ppbもの猛毒イソシアネートが連続して観測され、それは窓を閉めると2~3分で消滅することを過去の測定で確かめています。イソシアネートは反応性が非常に高く、部屋の中に閉じ込められた状態では別の物質にすぐ変化してしまいます。
(中略)
一般的な微物に比べて非常に多くの大小マイクロカプセルがくっついていました。また、カプセルが破裂した残骸らしき物も見られました。マスク無しで外に出たり、窓を開けているとこれらを吸い込んでいる、恐ろしい事が起こっています。
長時間の庭仕事で頭に被っていたタオルから3.5ppb、作業着から0.6ppbといった高いレベルのイソシアネートが検出されたのもこれで納得がいきました。
恐ろしや、我が家の外気はマイクロカプセルだらけだった:外気の浮遊物質捕集観察
イソシアネートは化学物質の一種で、肺に影響を与えることがあるため、労働安全衛生法によって規制されています。日本産業衛生学会が定めたイソシアネートの職業曝露限度は、0.005ppmです。また、厚生労働省が定めたイソシアネートの健康被害防止指針では、0.02ppm以下であれば、健康上問題ないとされています。
1ppm=1000ppbに相当します。つまり、イソシアネートの基準値である0.005ppmは、5ppbとなり、0.02ppmは、20ppbに相当します。
政治的判断で決められた基準値が、本当に安全なものかどうかは私にはわかりません。「微量だから安全」「基準値以下だから安全」何度聞いたことでしょう。化学物質過敏症患者は、基準値以下の微量な化学物質にも反応してしまいます。
空気が汚染されていることに間違いはありません。
マイクロカプセルによる化学物質の放出の仕組み
マイクロカプセルは非常に小さなカプセルで、内部には液体や固体の化学物質が封入されています。これらのカプセルは通常、ポリマーと呼ばれる材料で作られており、カプセル自体は密閉されています。
マイクロカプセルの中には、さまざまなトリガーに反応して破壊されるタイプがあります。一般的なトリガーは、物理的な刺激や環境の変化です。例えば、圧力、温度、湿度、紫外線、振動、摩擦などが挙げられます。これらのトリガーがカプセルに加わると、ポリマーの壁が崩壊し、内部の化学物質が放出されます。
一度では破れないため、長い時間をかけて香り等が拡散します。
マイクロカプセルの破壊による化学物質の放出は、さまざまな応用分野で利用されています。医薬品や化粧品の分野では、カプセルに有効成分を封入し、特定の条件下で放出することで、効果的な配信やタイムリリース効果を実現しています。また、香りや味の変化を制御するためにも使用されます。
マイクロカプセルとマイクロプラスチック、何が違う?
環境省の定義によると、マイクロプラスチックは「5mm以下の微細なプラスチック類」とされ、マイクロカプセルは「マイクロプラスチックの一種で、肉眼では見ることができないほど小さなもの」とされています。つまり、マイクロカプセルとマイクロプラスチックは、両方とも微小な粒子のプラスチックという共通点があります。
マイクロカプセルは、一時的マイクロプラスチックと言われ、肉眼では見られない微小なカプセルの中に液体や固体の物質を封じ込めた構造でできています。マイクロカプセルは様々な目的で使用されており、例えば医薬品や化粧品の配合成分を保護し、効果を長時間にわたって放出するために利用されています。マイクロプラスチックとは違い認知度は低いため、洗剤や柔軟剤、化粧品などの日用品に使用される危険性はあまり問題しされておりませんが、「香害」の原因のひとつともされています。
一方、マイクロプラスチックは、微小なプラスチックの粒子です。これらは主にプラスチック製品の破片や繊維が崩壊して形成されます。マイクロプラスチックは、洗濯時に衣類から放出されるマイクロファイバーや、化粧品や洗顔料に含まれるマイクロビーズ、不織布マスク、紙コップ、人工芝、タイヤ片などが一般的な源となっています。これらの微小なプラスチック粒子は、環境中に広がり、海洋や淡水、土壌などに存在することが報告されています。
マイクロカプセルは特定の目的で設計され、製品に組み込まれているのに対し、マイクロプラスチックは不要なプラスチックの廃棄物から発生するものであり、環境への影響や健康への懸念がある点です。マイクロプラスチックは生物に取り込まれる可能性があり、食物連鎖を通じて生態系に広がることが懸念されています。
また、マイクロプラスチックで肺線維症になるという動物実験の結果が出ています。
2017年には、ベルギーの研究者が、ベルギー人の好物であるムール貝をよく食べる人は、年間最高で1万1000個のプラスチック粒子を体内に取り込んでいるという研究結果を発表した。
「欧州ホタテ、全身にプラスチック粒子残留の可能性」
新たな研究で、世界の食塩の9割にマイクロプラスチックが含まれているというショッキングな結果が報告された。
「研究室 忍び寄るマイクロプラスチック汚染の真実」
2021年6月に学術誌「Environmental Science & Technology」に掲載された分析によると、プラスチックに使われている化学物質は1万種類を超え、そのうち2400種類以上で人体への影響が懸念されている。しかも、多くの国で十分な規制がされていない物質も多いと、論文は指摘する。そのうち901種に関しては、法令で食品包装への使用を禁じている地域もある。
(中略)英国ハル大学の研究チームが行った肺の研究は、浮遊プラスチックがいかに体の奥深くまで侵入しているかを示している。手術中に患者の肺の中でプラスチック繊維が見つかるだろうことはある程度予測していたものの(過去の研究では、死体からプラスチック繊維が見つかった)、肺のなかでも一番奥にある下葉の部分に最も多く、しかも様々な形や大きさのマイクロプラスチックが入り込んでいたことに、研究者らは衝撃を受けた。なかには、長さが2ミリの繊維もあった。
血液や肺に侵入 マイクロプラスチックは有害か?|日本経済新聞
マイクロプラスチックによる健康被害、少し検索するだけでもたくさん出てきます。
海洋生物による誤食による被害も有名ではありますが、人の身体からもこのマイクロプラスチックが検出されていることも問題となっています。また、この体内に入ったマイクロプラスチックから、有害な物質が溶け出し、吸収されてしまうことも研究で明らかになっています。食物連鎖により、結果人間への有害物質の影響が出てきてしまうのです。
エクセター大学とプリマス海洋研究所(PML)の研究者らは、英国の海岸に打ち上げられたすべての海洋哺乳類、イルカ、アザラシ、クジラの10種50匹を検査し、そのすべての腸内からマイクロプラスチック(5mm未満)を発見した。
粒子の大部分(84%)は合成であり、 機械学会が2018年発表した報告書では 、世界の海洋に放出されたマイクロプラスチックの35%が合成繊維に由来していることが明らかになった。漁網や歯ブラシなどからも発生する可能性がありますが、残りは破片で、発生源としては食品の包装やペットボトルなどが考えられます。
「すべての動物がマイクロプラスチックを摂取していたということは衝撃的ですが、驚くべきことではありません」とエクセター大学およびPMLの筆頭著者サラ・ネルムズ氏は述べた。
Microplastics found inside ‘every marine mammal’ on UK shores
マイクロプラスチックには可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤などの化学物質が含まれており、その中には内分泌かく乱作用や生殖毒性を持つものがあります。これらは「環境ホルモン」と呼ばれ、健康被害を引き起こす可能性があるとされています。
マイクロプラスチックは何千ものホルモン破壊化学物質を放出します。
製造された化学物質は 85,000 種類以上あり、そのうち数千種類はプラスチックやその他の消費者製品に含まれる内分泌かく乱化学物質 (EDC) やフタル酸エステルであり、最終的に海に流れ込みます。
ホルモンの第一人者であるアイボーン・ミルプリ博士は、自身の研究と観察を通じて、過去50年にわたり、プラスチックに含まれる化学物質が、生殖能力の低下や男性/女性の性奇形から肥満、糖尿病に至るまで、発育異常や病気のレベルの上昇を引き起こしていると述べています。 、がん、心臓発作、注意欠陥多動性(ADH)などの認知、行動、その他の脳関連の問題。
「現在、プラスチック汚染の結果として自然環境中に一般的になっている、いわゆる内分泌かく乱化学物質(EDC)がホルモンの自然な機能を妨げているという確かな科学的証拠が存在する」と彼女は述べた。
Microplastic pollution ‘number one threat’ to humankind
日本周辺でのマイクロプラスチック濃度は世界平均の27倍相当とされ、2030年には2019年時の約2倍になるといわれています。既に東京、大阪湾など全国各地の魚4割からマイクロプラスチックが検出されています。
欧州、意図的に添加するマイクロプラスチックの規制へ
化粧品、香水、家庭用洗剤などの日用品、肥料、塗料、スポーツ用の人工芝など、利便性や利益だけのために使われているマイクロプラスチックが廃止されると報告がありました。マイクロプラスチックは、環境中に放出されると、長期にわたり残留し回収もできません。生物の体内に取り込まれやすく、食物連鎖に入り込むことから、健康や環境にリスクがあると考えられるため、今回の規制に至りました。
この規制に対応するためには、企業が最小限のコストで製造プロセスや部品を変更できるよう、段階的に導入されます。例えば、人工芝に使われるマイクロプラスチックの猶予期間は8年、洗剤や殺虫剤は5年、フレグランスは6年など。
ただし、「溶解性ポリマー」「天然ポリマー」「生分解性ポリマー」そして「使用時点でマイクロプラスチックの形態になっていないポリマー」は、この規制案の対象外であるため、逃げ道はできてしまいそうですが、それでも何の動きも見せない日本の状況とはずいぶん違います。後に続いて欲しいものです。
出典:EU REACH Committee votes to ban microplastics from most daily life products
洗濯や化粧品に使用されるマイクロカプセルの普及
洗濯や化粧品に使用されるマイクロカプセルは、近年、急速に普及しています。
洗濯に使用されるマイクロカプセル
洗濯に使用されるマイクロカプセルは、主に香りや柔軟性の向上、除菌、防臭を目的としています。例えば、衣料品に香りを長時間残すために、フレグランスがマイクロカプセルに封入されています。洗濯時に摩擦や熱によってカプセルが破壊され、香りやその他成分が放出されます。
”身近なところでは洗濯で使う柔軟剤。一回に使用する柔軟剤の量で、だいたい170万個くらいのマイクロカプセルが入っていますが、洗濯排水として130万個ぐらいが流れていき、残りが衣類に付着する。パンパンとはたいて、衣類に残るのは1万個。それ以外は環境に飛散しています。部屋干ししていれば、テーブルや家具、床に、マイクロカプセルが落ちていますよ。”
多くの人がまだ知らない、本当の「プラスチック問題」|環境化学者・大河内教授|暮らしニスタ
マイクロカプセルは製品に表示義務がないため、どのメーカーのどの製品にマイクロカプセルが使用されているか、わからない状況です。メーカーのお客様センターへのヒアリングベースとなりますが、以下の商品を参考になさってください。
洗濯のたびにマイクロカプセルを付着していくと、衣類の繊維にカプセルが残り、接着剤のように塗り固められる状態となって、取り除くことがほぼ不可能になってきます。
化粧品に使用されるマイクロカプセル
化粧品におけるマイクロカプセルの使用は多岐にわたります。
例えば、美容液や保湿クリームなどスキンケア製品では、保湿成分や美容成分など有効成分をマイクロカプセルに封入しています。これにより、成分の安定性を保ちつつ、肌に長時間効果を与えることができます。また、メイクアップ製品では、マイクロカプセルが色素や輝きを含んでおり、使用時にカプセルが破壊されて効果が発揮されます。
化粧品に用いられるカプセルは、天然の成分または合成高分子、無機物などでつくられ、ゼラチンやカゼイン、アルブミンなどの水溶性タンパク質や、寒天、セルロースなどの炭水化物をはじめ、メタクリル酸などの合成の高分子なども使われる.カプセルの内部には、香料や植物抽出エキスなどの酸化に弱い原料やビタミンなどの有効成分が入れられることが多い.また、大豆や卵黄レシチンを用いて調製されるリポソームも一種のマイクロカプセルで、高い生体親和性と、ドラッグデリバリーの特性を活かして各種の有効成分の配合に利用されている.
マイクロカプセル|日本化粧品技術者会
マイクロカプセル普及の背景
洗濯物や化粧品に使用されるマイクロカプセルが普及した背景は、消費者の需要によるものが大きく関わっています。衣類の柔軟剤や除菌剤、防臭剤などは、消費者の生活の中で必要不可欠なものとなっており、製品の付加価値を高めるためにマイクロカプセルが使用されるようになりました。また、化粧品においても、マイクロカプセルが使用されることで、肌に潤いや栄養を与えることができるため、消費者からの需要が高まっています。
マイクロカプセルを使用した製品は、香りの持続性、柔軟性の向上、保湿効果の長時間持続など、消費者に魅力的な特性や効果を強調するためのマーケティングや広告活動によって、消費者に広く知られるようになりました。
中でもテレビCM等の広告媒体やインフルエンサーマーケティングはより多く活用され、マイクロカプセルを含む製品は消費者に魅力的に映り、需要を喚起させてきました。一種の洗脳でもあります。スポンサーの力も広告活動において重要な役割を果たしており、通常、製品の開発や広告費用を負担し、製品の宣伝や普及を支援します。スポンサーの力により、広告活動の規模や範囲を拡大することができます。
しかしながら、スポンサーの力が過度に強い場合、マーケティングや広告活動が一方的な情報提供や洗脳的な手法になることがあります。このような状況では、消費者は適切な情報を得ることが難しくなり、製品の効果やリスクが過剰に宣伝されることがあります。また、スポンサーによる製品開発や広告活動の支援は、製品の開発や普及を促進する一方で、スポンサーの利益や目的に合わせた情報の操作や隠蔽を引き起こす可能性もあります。このような状況では、消費者は客観的な情報や評価を得ることが難しくなります。
スポンサーがテレビ局にお金を払ってCMを流しているため、スポンサーに都合の悪いことはテレビでは言えませんもんね…
そのため、マーケティングや広告活動においては、情報の透明性と公正性が重要です。マイクロカプセルを含む製品のマーケティングや広告活動が製品の利点や魅力に焦点を当てているため、人体や環境への懸念や規制の話題が十分に取り上げられていない可能性があります。また一部の企業は製品の利点を前面に押し出すことに集中し、製品の裏側や潜在的な問題については十分な説明を行っていない場合があります。消費者は正確な情報に基づいて自己の意思決定を行う権利を持っており、製品の真の価値やリスクを正しく把握することが求められます。
マイクロカプセルが引き起こす健康被害
マイクロカプセルによる健康被害は、私たちの免疫系がマイクロカプセル内外の物質に異常な反応を示すことによって引き起こされます。具体的には、マイクロカプセルの破壊、吸入、飲用、長期的な暴露です。
マイクロカプセルの種類や使用方法、個人の感受性によっても健康被害のリスクは異りますが、一般的には以下のような健康被害があります。
- アレルギー反応:マイクロカプセルに内包されている物質がアレルギーを引き起こす場合があります。カプセルが破壊されたり、皮膚や呼吸器から吸収されることで、アレルギー反応が起こる可能性があります。アレルギー症状には発疹、かゆみ、じんましん、呼吸困難、重症な場合にはアナフィラキシーショックと呼ばれる緊急の症状が現れることもあります。
- 毒性:マイクロカプセルに使用される化学物質が有害である場合、摂取や吸収によって毒性を引き起こす可能性があります。これには内分泌攪乱物質や神経毒、がん性物質などが含まれます。マイクロカプセルが体内に入ると、肺の奥深いところまで届く可能性があったり、これらの物質が血液中に放出され、健康への悪影響を及ぼす可能性があります。
- 炎症や刺激:マイクロカプセルが皮膚や粘膜と接触した場合、炎症や刺激を引き起こすことがあります。カプセルの表面が粗い場合や、化学物質が皮膚や目に刺激を与える場合があります。炎症や刺激によって、赤み、腫れ、痛み、かゆみなどの症状が現れることがあります。
- 食物連鎖:マイクロカプセルは洗剤や化粧品などの製品に使用され、使用後に排水されます。この排水は下水処理施設を経て水域に放出され、生態系に影響を与える可能性があります。マイクロカプセルは微小なサイズであり、魚や他の水生生物が摂食することがあります。これにより、マイクロカプセルに含まれる化学物質が生物に取り込まれ、食物連鎖を通じて上位の生物に移行する可能性があります。特に海洋生態系では、マイクロカプセルに含まれる可塑剤などの有害物質が魚や甲殻類などの海洋生物に影響を及ぼすことが懸念されています。これらの化学物質は生物の生殖機能や成長に影響を与える可能性があり、生態系全体に広がることで生物多様性や生態系の安定性に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、人間が水産物を摂取することによって、マイクロカプセルに含まれる化学物質が私たちの体内に入る可能性もあります。これにより、健康への潜在的なリスクが生じる可能性があります。一部の化学物質は内分泌撹乱物質として知られており、ホルモンバランスや生殖機能に影響を及ぼすことがあります。
マイクロカプセル香害
2000年頃から、強い香りの柔軟剤「ダウニー」などがブームになり、日本のメーカーでも香りを重視した商品が増えています。ここ数年は、合成洗剤や柔軟仕上げ剤などの香りが極端に強くなり、その強い香りで体調を悪くする人が続発しています。この現象を表わす「香害」という言葉が市民権を得ています。これは、マイクロカプセル技術によって生み出されたと言っても過言ではないでしょう。
>香害の記事は準備中です。
マイクロカプセルは、特定の成分を薄い膜で覆った超微小なカプセル。多くの機能があり、医薬品・食品原料など多用途に用いられている。
香料の場合は、3000種類以上ある香り成分から複数の成分を選んでブレンドした「調合香料」が封入される。膜物質(壁材)には「メラミン樹脂」や「ウレタン樹脂」といったプラスチック(合成樹脂)が使用される。
これを柔軟剤に使えば、衣類の洗濯のさい繊維に付着して簡単には取れなくなる。衣類を着用して体を動かすたびにカプセルが破れ、中身の香料が放出され香りが漂う。強い香りを長続きさせるには実に便利な技術だが、弊害も大きい。
香りマイクロカプセルは直径が数十~数マイクロメートル(μm、μは100万分の1)と超微小だから、人が吸い込めば肺の奥深くまで入り込む可能性がある。そこでカプセルが破れて香料成分が体内に取り込まれ、深刻な健康被害を引き起こす。気体の合成香料を嗅いでも平気だが、マイクロカプセル化された香料を吸い込むと、気持ちが悪くなって咳が続くなどの症状が出る人もいる。
香りマイクロカプセルはまた、空気の流れなどに乗って移動する。だから、柔軟剤を使った洗濯物が干されると、人工的なニオイが近所に流れる。マイクロカプセル化は香害拡大の原因の一つなのだ。
香料は通常、合成洗剤では1〜2%、柔軟仕上げ剤では10%しか洗濯物に残りませんが、マイクロカプセルを使用すると、合成洗剤では20%、柔軟仕上げ剤では50%もの香りが残るため、その効果は非常に高くなります。マイクロカプセルに香料が入っているため、柔軟仕上げ剤を好む人々の衣類から放出される香りは、何メートルも離れた場所まで届き、近隣の洗濯物の香りのせいで窓が開けられなくなったり、飲食店や公共交通機関の座席などで移香することがあります。また、お店で売られている様々な商品のパッケージにも香りが移ってしまうことがあり、香害被害者にとってものすごく生活しにくい世の中となってしまっています。
『マイクロカプセル香害』という本があります。香害被害者の声を赤裸々に綴られた本で、読み進めるのが本当に苦しく、胸が痛くなります。これまでの歴史や専門家の研究内容も詳しくまとめられており、「香害」も「マイクロカプセル」を初めて知る方にもぜひ読んでいただきたい一冊です。
多くの方にこの問題を知っていただき、危機感を持って生活を見直していただけることを心から願っています。
マイクロカプセルによる環境への懸念
マイクロカプセルの使用が増えることで、環境への懸念も広がっています。ここでは、具体的な懸念事項を詳しく説明します。
- 環境への放出と蓄積:マイクロカプセルは洗濯や化粧品の使用中に環境に放出され、そのまま水や土壌に広がる可能性があります。そして、これらのカプセルが長期間にわたって環境中に蓄積されることが懸念されています。この蓄積は、生態系や地球環境に潜在的なリスクをもたらす可能性があります。
- 生態系への影響:マイクロカプセルが生物に取り込まれることや、生態系にどのような影響を及ぼすのかはまだ完全には解明されていません。しかし、一部の研究では、これらのカプセルが生物の生理や行動に変化をもたらす可能性があると指摘されています。生態系への悪影響が起こらないよう、慎重な監視と研究が必要です。
- 水辺への影響:洗濯時の排水によってマイクロカプセルが経済水域(河川、湖、海洋など)に流入することがあります。これによって、水中の生態系に変化が生じる可能性があります。特に水中生物への影響や生態系のバランスの変化について、詳細な研究が進められています。
- 製造と廃棄物処理:マイクロカプセルの製造には化学物質やエネルギーが必要です。製造過程で使用される化学物質が環境中に放出されることや、製造に伴うエネルギー消費が環境負荷につながる可能性があります。また、使用後の製品や廃棄物の処理方法も重要です。効果的な廃棄物処理が行われない場合、マイクロカプセルが環境に漏れ出すリスクがあります。
フローラルシジミとは?
「西日本の汽水湖沼および首都圏の感潮河川で漁獲されたヤマトシジミを提供いただき分析したところ、柔軟剤から検出された香り成分と似た組み合わせで人工香料が検出された」そこから、フローラルシジミと一部の方に呼ばれています。
これは、東京大学の山室真澄教授、愛媛大学の鑪迫典久教授らが行った「合成香料を内包したマイクロカプセルが水界生態系に与える影響の検証」の研究で明らかとなりました。
マイクロカプセルが含まれる合成香料が水中に放出されたときに、生物や生態系にどのような影響を与えるかを調べた研究です。具体的にこの研究では、実験環境で合成香料を内包したマイクロカプセルを水中に入れて、生物の生存率や成長、行動パターンなどを調べました。また、水中の生物たちの生活や、水の中の物質の分解の状況も見ました。
結果として、合成香料を内包したマイクロカプセルが水中に放出されると、一部の生物には悪影響を与えることがわかりました。生物の生存率が低下したり、行動が変わったりすることが観察されました。また、マイクロカプセルの存在が水中の生態系のバランスを崩す可能性も示されました。
この研究は、マイクロカプセルが水中の生物や生態系に与える影響を明らかにしました。環境保護や持続可能性の観点から考えると、マイクロカプセルの安全性や使用方法には注意が必要です。より安全な使用や環境への配慮が求められる結果となりました。
参考:合成香料を内包したマイクロカプセルが水界生態系に与える影響の検証
マイクロカプセル入りの合成洗剤や柔軟剤は法律違反!
美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境並びに海洋環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律(通称:海岸漂着物処理推進法)
第十一条の二 事業者は、マイクロプラスチックの海域への流出が抑制されるよう、通常の用法に従った使用の後に河川その他の公共の水域又は海域に排出される製品へのマイクロプラスチックの使用の抑制に努めるとともに、廃プラスチック類の排出が抑制されるよう努めなければならない。
出典:E-GOV法令検索
洗濯機は家庭でよく使われる家電製品であり、多量の衣類を効率的に洗濯することができます。しかし、多量の衣類を洗濯するためには、洗剤や柔軟剤の使用量も増えるため、排水の量も増加することになります。この排水は、一般的に処理されずにそのまま流れ出るため、環境に悪影響を与える可能性があります。マイクロカプセルが使用された洗剤や柔軟剤を使用することは、香料やマイクロカプセルが排水として流れ出し、海岸漂着物処理推進法に抵触する可能性があることは明らかです。
メーカーはマイクロカプセルを合成洗剤や柔軟剤に配合することをやめなければならず、国も法律違反しているメーカーに対して生産・製造の中止を命じる必要があります。
かつて、三洋電機が市場に投入した「洗剤のいらない洗濯機」は、発売当初消費者の支持を受け好調な売れ行きを見せました。しかし、それまで研究開発において協力関係を保ってきた、洗剤業界からの反発は予想をはるかに上回るものであり、結果潰されてしまいました。
洗剤のいらないコインランドリーも存在しますし、現在の技術でも十分に「洗剤のいらない洗濯機」は作れるはずです。なのに一向に出てきません。この背景を見ても、洗剤業界の圧力は相当なものだと思います。家電メーカーは、洗濯機の本来の目的を思い出していただきたいです。洗剤等の製造販売元とコラボしている場合ではないのです。
- シャープ×P&G(香りプラスコース)|ES-X11A、ES-PW11H、ES-GV10H他
- アクア×P&G(ジェルボールコース)|AQW-GV90H、AQW-GV80H、AQW-GV70H
- 日立×ライオン(洗剤直ぬりコース)|BD-NX120F
さいごに
マイクロカプセル問題の深刻さを知ることは、私たちの安全と環境への配慮に非常に重要です。マイクロカプセルは私たちの日常生活に広く利用されていますが、化学物質過敏症の方々にとっては特に問題で、マイクロカプセルは害でしかありません。
私たち一人ひとりの意識と行動が、より安全で環境に優しい社会を築くための鍵となり、自分自身や未来の世代のために、マイクロカプセル問題について真剣に考え、対策を取っていきましょう。
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