ドライクリーニングのフッ素系溶剤、HFC365mfc(ソルカンドライ)について

hfc365mfc ソルカンドライ

ドライクリーニングのフッ素系溶剤は、主にHFC365mfc(ソルカンドライ)が使用されています。

昔CFC(フロン)-113(フッ素系溶剤)やトリクロロエタン(塩素系溶剤)が使用されていましたが、オゾン層破壊物質として知られており、1995年末に国際的な規制によって製造が禁止され、現在は使用されておりません。また、HCFC-225はフロン代替物質として使用されましたが、2020年で製造中止となりました。

出典:ドライクリーニング溶剤について|厚生労働省

これらのフロン溶剤が禁止されたため、代替品として代替フロン(HFC)が開発されました。オゾン層は破壊しませんが、温室効果ガスであり、地球温暖化係数は794と、気候変動に対して甚大な悪影響を及ぼす化学物質です。また、ドライクリーニング溶剤として使用しているのは日本だけで、揮発性有機化合物(VOCs)排出規制対象となっており、クリーニングと公衆衛生に関する審査委員会は「皮膚刺激性や突然変異性はなく,許容濃度に関する規定もないが,ヒトの健康と環境影響に僅かな有害性を認める。」とのこと。

出典:クリーニングと公衆衛生に関する 研究報告書
参考:ハイドロフルオロカーボン類(HFC類)の環境への有害性と被曝リスクの概観

地球温暖化問題が深刻化し、気候変動対策が急務となっています。先進国では、産業革命前に比べて気温上昇を2度未満に抑えるためには大幅な削減が必要であり、CO2削減だけでなく、フロン類などの温室効果ガス削減も重要です。しかし、日本のクリーニング業界では、2009年に石油溶剤を違法に使用していた工場が、全国で一斉に摘発されたことを受け、HFC365mfcという温室効果ガスを使用した洗浄機への転換が一気に進みました。

参考:「引火性溶剤を用いるドライクリーニングを営む工場」についての建築基準法違反に係る実態調査について|厚生労働省

厚生労働省は、「公害防止用設備に係る特別償却制度」や「公害防止用設備に係る課税標準の特例措置」(通称:エコ・クリーニング機減税)といった税制優遇措置を導入し、HFC365mfcを使用するドライクリーニング機の取得や保有を支援しています。これにより、HFC365mfcからの転換が促進されています。

そこで、2012年9月28日、気候ネットワーク、主婦連合会環境部、ストップ・フロン全国連絡会、WWFジャパン、日本環境法律家連名の5団体は、フロン類利用の拡大を止め、用途規制の実施を求めるとともに、関係業界に対しても、フッ素系物質の使用を取りやめるよう要望書を提出しました。

HFC365mfc声明文

2012年9月28日、気候ネットワーク、主婦連合会環境部、ストップ・フロン全国連絡会、WWFジャパン、日本環境法律家連名の5団体は、COP17で京都議定書の対象ガスとして新たに追加することが決定したHFCを、日本のクリーニング業界が新規に利用拡大しようとしていることに対して、声明「グローバルな温暖化対策に逆行するクリーニング業界~強力な温室効果ガス(HFC365mfc)の拡大に歯止めを~」を発表しました。声明では、フッ素系溶剤の取得や保有に税制優遇策を設けている厚生労働省に対して、ただちに優遇策を取りやめるよう求めているほか、関係業界が速やかにフッ素系物質の使用を取りやめるよう要望しています。

グローバルな温暖化対策に逆行するクリーニング業界 ~強力な温室効果ガス(HFC365mfc)の拡大に歯止めを~(KIKO)|一般社団法人環境金融研究機構

また、国会でも問題視されています。

厚生労働省は、2014年度税制改正要望で、ソルカン溶剤を使用するドライクリーニング機の購入を促進する特例措置の延長を求めていますが、環境団体などから撤回を求める声が上がっています。

HFC365mfcは、地球温暖化係数がCO2の794倍(100年値)にもなる温室効果ガスですが、政府は使用実態や排出量の調査すら行っていません。

高橋氏は、早急な調査の実施を要求。答弁書は、「これまで調査していなかった」と認めたうえで、国連気候変動枠組み条約のもとでの温室効果ガス排出量の国別報告において、HFC365mfcが新たに対象となるため、「製造及び使用の実態を調査しつつ、排出量を把握する」と回答しました。

主意書は、「使用・排出の実態すら把握をせずに、特例措置によって使用を促進することは、温室効果ガス削減を進める国際社会の努力に逆行する」と指摘。特例措置の延長はすべきでないと主張。答弁書は、「検討中」として延長するかしないか回答を避けました。

税制特例延長やめて クリーニング溶剤で 高橋議員質問主意書|しんぶん赤旗

この代替フロン(HFC)は2016年の議定書の改正(キガリ改正)を受け、2019年から規制対象に追加されました。先進国は2036年までに段階的に85%削減、途上国は2045年頃までに段階的に80%削減することが決定しています。

また、富士通グループなど、一部の上場企業では「HFC365mfc」を使用禁止物質にしています。

参考:富士通グループ指定含有禁止物資

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