化学物質過敏症患者が葬儀に参列・列席するには?

葬式

大切な人との最期の別れである、お葬式。わかってはいるものの、化学物質過敏症の方は、葬儀に出ることも難しいのです。下記2023年5月に大阪府堺市で行われた「過敏症・香害・SDGs」のパネル展の一枚です。化学物質過敏症の方でしたらこちらのパネルが痛いほど、よくわかるのではないでしょうか。

香害パネル展

故人とよほど親しい間柄でない限り、葬儀参列・列席の検討対象に入らないと思うので、ご家族やご親族など、お身内の方を念頭にこの記事を書きました。適切な対策を取ることで、化学物質過敏症の方でも葬儀に出ることができる…かもしれません。詳しくみていきましょう。

※宗教・宗派は考慮しておりません。

もくじ

化学物質過敏症の方が気になる、葬儀場で使用される化学物質

葬儀場では、清掃時に洗剤や消毒液、除菌剤はもちろん、芳香剤は多様に使用されますし、当然ながら線香も化学物質が使われています。床に敷かれたカーペットの素材や、染み込んだにおい・化学物質に反応する方もいらっしゃいます。香りの強い花や、花に付いた農薬、お弁当の添加物なども体調不良の原因となる場合があるでしょう。

化学物質過敏症の方は、これらの物質によって症状が悪化しますが、可能な限り事前に葬儀場のスタッフへ連絡し、使用する化学物質の内容確認や、使用を控えるようお願いすることが大切です。

また、喪主の場合に限られますが、ある程度融通のきく葬儀場を探すか、場合によっては自宅葬も検討しましょう。

無香料・無煙の線香の使用は可能か?

線香は宗教や宗派によっては使用しないところもありますが、ほとんどの場合使用されます。緑色の線香や茶色、ピンクなど種類も豊富ですが、色によって反応する・しない、などあります。これは着色剤や染料によるものです。また、防腐剤・香料・燃焼剤などの添加物、農薬も入っていることが多いです。

そしてほとんどの線香には「ベンゼン」という化学物質が含まれています。ベンゼンは強い揮発性を持ち、蒸気として吸入されると身体に吸収されます。長期的な低濃度のベンゼン曝露は、健康への悪影響の懸念があり、白血病や他の血液がんのリスクを増加させる可能性、めまい、頭痛、嘔吐、貧血や血小板減少症などの血液異常、免疫機能の低下や感染症への感受性の増加を引き起こす可能性があります。

線香、お香、蚊取り線香10製品を用い、燃焼により発生する煙中のベンゼン濃度を測定した。

すべての製品からベンゼンが検出され、単位重量あたりのベンゼン放出量は、230 μg/g~1,010 μg/gであった。

試料を6畳間で1時間燃焼させたときの推定室内ベンゼン濃度は 5.4 μg/m3 ~31.3 μg/m3であり、いずれも大気環境基準を超えていた。

線香、お香及び蚊取り線香の煙中ベンゼン濃度|東京都健康安全研究センター

葬儀場によっては、無香料・無煙の線香を備えている場合がありますが、ほとんどないと思った方が良いでしょう。ある場合は変更するよう要望することも可能ですし、ない場合は持参することもできますが、無香料・無煙と書かれている場合でも、完全無臭・無煙の線香はありません。下記に、これまで色々試した中でも、反応の出なかったものを掲載させていただきます。

ヤマダ

個人差はありますので、参考程度になさってください。

また、喪主の場合は線香なしの葬儀も検討しましょう。ただし、葬儀場、葬儀場のスタッフや僧侶は線香のにおいが染み付いている可能性があるので、事前に確認が必要です。

葬儀に使える香りのない花は?

完全無臭の花は、残念ながら存在しません。葬儀に使える香りの少ない花としては、カーネーションやアネモネ、リンドウ、グラジオラス、クレマチス、かすみ草などが挙げられます。これらの花は香りがあまりなく、花粉の飛散も少ないため、化学物質過敏症の方でも比較的安心できます。ただし、地域や文化によっては異なる風習や慣習があるため、具体的な要望や地域の慣習に合わせて花を選ぶことが重要です。必ず葬儀のプランナーやフローリストに相談しましょう。

ヤマダ

色は白や淡い色を選択してくださいね。色によっては香りのするものもあります。

普通の喪服が着られない場合の対処法

市販されている喪服には、染料や加工剤、防虫剤、殺菌剤、防カビ剤など化学物質が多く使われているため、身体に合わない化学物質過敏症患者さんも多いでしょう。以下に対処法をご紹介します。

洗える喪服を購入する

急な対応は難しいですが、洗える喪服を購入し、ベイクアウトしてから着用するのもおすすめです。自分で洗濯などできない場合は誰かにお願いしたり、ナチュラルクリーニング店を利用しましょう。ただし、洗える喪服はほとんどがポリエステル製ですので、反応の出る方はご注意ください。

無地の黒色や濃い色の衣服を選ぶ

喪服の代わりに、綿や麻などの自然素材でできた、無地の黒色や濃い色の衣服を選ぶことで、服装を慎ましく整えることができます。黒色や濃い色は喪服として一般的に認識されているため、カジュアル感はでますが、適切な印象を与えることができます。

こちらは無印良品の太番手七分袖ワンピースです。

太い綿糸を編み立てた、厚手で丈夫な生地を使いました。生地はオーガニックコットン100%です。染料を使用しているため、反応の出る方はご注意ください。

また、黒や濃い色にこだわらず、白やグレーなどの洋服を着用し、黒いバンダナやリボンで身を包むことも選択肢の一つです。

中古品を購入する/知人にもらう

フリマサイト等で喪服と検索すると、ものすごい数の出品がなされているので、普段柔軟剤などを使用しない方を探し、購入するのも一つの手です。また、着用しなくなった喪服を家族や知人に譲っていただくのも良いでしょう。

カッパや防護服を着用して完全防備する

葬儀のほとんどが急を要するものですから、準備が間に合わない場合も当然あり得ます。着られる洋服自体が少ない化学物質過敏症の方もいらっしゃるでしょう。その場合は着られる洋服にカッパや防護服などを着て、参列させていただくことも検討しましょう。(カッパや防護服に反応する方はベイクアウト必須です。)

ヤマダ

こちらは家族葬だと叶いやすいですね。

葬儀場でのにおい対策

葬儀場では室内の化学物質の他、参列者から放たれる化学物質臭(整髪料や喪服保管時の防虫剤など)が充満し、当然ながら髪の毛や服など全身ににおいがこびりつくため、以下のような対処を検討しましょう。

  • マスク、防毒マスクを着用する
  • カッパや防護服を着る
  • 鼻栓をする
  • 帽子をかぶる
  • 携帯空気清浄機を活用する
  • なるべく換気していただく

火葬場での対処法

葬儀場から火葬場までの移動でバスに乗る必要があったり、燃焼物の臭い・化学物質が発生したり、線香も焚かれます。遺灰が残るため、当然ながら換気はできません。また、遺灰から化学物質臭がすることがあったりと、化学物質過敏症の方にとっては、葬儀場以上に辛い環境だと思います。

曝露覚悟で行かれる場合、上記の葬儀場でのにおい対策に加え、マスクをさらに追加で重ね付け、メガネや靴カバー、酸素ボンベの持参もご検討ください。

ヤマダ

重度から中度〜軽度へと向かっているときに身内の葬儀があり、葬儀場で既に曝露していましたが、どうしても火葬場へも行きたくて無理矢理行った結果、いわゆるアナフィラキシー症状が生じたことがあります。数週間寝込み、起き上がることもできませんでした。絶対に無理をしないでください。

曝露してしまったときの対策を事前に考えておく

  • ビニール袋に着替えを用意しておく
  • 汚染した服を入れるビニール袋を準備しておく
  • 室内にひとりで休める場所を確保していただく
  • 室内に休める場所がない場合は、外に椅子などを準備しておく
  • 曝露時はすぐに退席、帰宅されることを事前に周知しておく
  • 帰宅方法を検討しておく(タクシーで帰る?誰かに送ってもらう?自宅が近ければ良いですが、遠方だった場合はどこかに泊まれる場所はある?)
  • 緊急事態の対策は事前にかかりつけ医と相談し、喪主やご家族と話しましょう

曝露した場合は、すぐにその場から遠ざかることが大切です。場所を移動して新鮮な空気を吸いましょう。

ヤマダ

私の場合ですが、室内の休憩スペースでは、他の方の入室を禁止にしてもらい、窓は全開で、超活性炭セラピーシートを敷いた上に掛け布団を敷き、その上で横になれるよう予め準備しました。曝露した場合は帰宅が難しかったりするので、万一に備えましょう。

葬儀参列後の対策

  • 脱いだ衣服をビニール袋に入れて密封し、汚染された衣服を除去する必要があります。できるだけ早く捨てる、もしくは自然派のクリーニング・協力者に洗濯を依頼します。
  • シャワーで全身を洗い流し、髪や肌に付着した化学物質を除去しましょう。

その他、

  • グルタチオン摂取を検討する
  • 解毒鍼灸を検討する

緊急時に備え、代謝を良くして解毒を促しましょう。効果は人それぞれですので、ご自身に合う方法が見つかると良いですね。

ヤマダ

私の場合はボーンブロススープをいただくと比較的回復が早いので、元気なときに大量に作って、冷凍庫に常備しています。また、水分を摂って利尿を促す、お風呂に入って汗を流すなど、便・尿・汗の通常のデトックスをより意識するようにしています。

さいごに

化学物質過敏症の方が葬儀に参列・列席するには多くの困難がありますが、事前に対策を講じることで、多少症状を抑えることができます。また、一番大切なことは、故人のお見送りに集中できることです。それ以外のことは、周りへの理解・協力も必要不可欠ですが、ある程度自由にさせてもらえるよう、交渉してみましょう。

大切な方のお見送り、諦めることなくできますように。

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