クリーニングで曝露?化学物質過敏症に優しいクリーニング屋の選び方

化学物質過敏症に優しいクリーニング屋の選び方
  • クリーニングに出した服が着れない、触れない
  • クリーニングに使用される化学物質で頭痛や眩暈がすることがある
  • 洗剤や染料の成分が肌に合わなくてかゆみや発疹がでることがある

クリーニングで使用される溶剤で、化学物質過敏症を発症された方もいらっしゃるでしょう。クリーニングにはさまざまな種類があり、使用される化学物質や溶剤には注意が必要です。特に化学物質過敏症を患っている方にとっては、適切なクリーニング屋の選択が重要です。

しかし、コンビニよりも多いといわれるクリーニング店。どのクリーニング屋が化学物質過敏症の方にとって優しいのか、自分に合うだろうかと迷ってしまいますよね。

そこで、この記事では化学物質過敏症の方もそうではない方も気をつけたい、クリーニングに使用される化学物質と、化学物質過敏症に優しいクリーニング屋の選び方についてお伝えします。身体に負担のかかる化学物質を最小限に抑えたクリーニング方法や環境への配慮、そして安心して利用できるクリーニング屋の特徴など、化学物質過敏症患者が持つ悩みを解決できますよう、解説していきます。

安心してクリーニングを利用するために、本記事が参考になりましたら嬉しいです。

もくじ

クリーニングの種類とそれぞれのメリット、デメリット

ドライクリーニング

ドライクリーニングは水を使用せず、特殊な溶剤(一般的には石油系やフッ素系、塩素系)を使って衣類をクリーニングする方法です。

メリット

  • 頑固な油性汚れ(油、皮脂、インク、化粧品など)を綺麗に落とすことができる
  • 水による摩擦や圧力が少ないため、型くずれや収縮・色落ち・毛羽立ちがしにくく、生地が堅くならず風合いがよいため、繊細な衣類や特殊な素材の衣類でもクリーニングできる
  • 乾燥が早く、シワが少ないため仕上げや整形が楽にできる

デメリット

  • 油や脂などの頑固な汚れは得意ですが、水溶性の汚れ(汗、手あか、醤油、果汁、アルコール)が落ちにくい
  • 使用する溶剤が高価な上に毒性や公害性があるため、気密装置を用い完全回収して使用する必要がある
  • 溶剤管理が必要
  • 不快なにおいが残る可能性がある

水洗いクリーニング(ウェットクリーニング)

水洗いクリーニングは水と洗剤を使用して衣類を洗浄する方法です。

メリット

  • 水溶性の汚れやにおいをしっかり落とすことが可能で、環境にやさしく、洗剤や水を使用するため比較的安全
  • 衣類の柔軟性や風合いを損なわずにクリーニングできる

デメリット

  • 水を使用するため、衣類の染色や縮みのリスクがある(特に繊細な素材や染め加工がある衣類は注意が必要)
  • 油性汚れの染み抜きが難しい場合がある
  • 乾燥に時間がかかることがある

特殊クリーニング

特殊クリーニングは、通常の洗濯やクリーニング方法では取り除けないような、特殊な汚れやシミを取り扱うための専門的なクリーニング方法です。

メリット

  • 通常の洗濯やクリーニング方法では難しいとされる汚れやシミ(例えば、頑固な油汚れやタンニン汚れ、着色物のシミなど)に対して、専門的な技術や特殊な洗剤を使用して効果的に取り除くことができる
  • ドライクリーニングや水洗いが適さないようなデリケートな素材や装飾、特殊な加工が施された衣類やアイテムに対しても適切な処理を行うことができる

デメリット

  • 一般的なクリーニング方法と比べて、クリーニングにかかる時間や費用が高い傾向がある
  • 特殊な処理や技術、洗剤の使用、乾燥や仕上げの工程などが追加されたりと、すべてのクリーニング店で提供できるわけではない

クリーニングで使用される化学物質は?

ドライクリーニング溶剤

ドライクリーニングで主に使用してされる化学物質や溶剤は、石油系、塩素系、フッ素系に分けられます。

石油系溶剤

日本のクリーニング屋の約9割が使用しているとされる石油系溶剤。主にターペン、n-デカンなどが使用されます。どちらも揮発性有機化合物(VOCs)に分類されています。石油系溶剤とは、工業用に使われるガソリンの一種のことです。ガソリンは車や機械を動かすものという印象が強いですが、クリーニングソンベルトと呼ばれるドライクリーニング用溶剤が使用されます。石油ナフサという原料を蒸留して作り出した成分であることから「石油系」という名前が付けられています。

引火性溶剤のため、建築基準法で商業地、住宅地での使用が禁止されています。乾燥が不十分のままその衣類を着用すると、肌に炎症が起きたり、ひどいときはただれたり、皮膚障害(化学やけど)を起こしす事故が頻発していました。年々減ってはいますが、敏感な方はわずかな溶剤のにおいや残留物に反応してしまいます。このドライクリーニングの手法自体が化学物質過敏症の発症原因の一つとも言われています。

塩素系溶剤

パークロロエチレン(テトラクロロエチレン)は、ドライクリーニング溶剤の中で汚れ落ちが最も高い効果が期待され、かつて広く使用されていた塩素系のドライクリーニング溶剤です。しかし、その有害性が指摘され、米国環境保護庁によってパークロロエチレンは有害物質として指定され、健康被害(発がん性疑い)や環境被害(土壌汚染)の懸念から、現在でもパークロロエチレンの排出量は規制されており、扱いが難しい溶剤となっています。多くの国で使用が制限されておりますが、日本ではまだ使用しているクリーニング屋は存在しますので、注意が必要です。

参考:アメリカ環境保護庁、テトラクロロエチレンの最終健康評価を発表
参考:ドライクリーニング溶剤と環境汚染

フッ素系溶剤

フッ素系溶剤は、主にHFC365mfc(ソルカンドライ)が使用されています。

昔CFC(フロン)-113(フッ素系溶剤)やトリクロロエタン(塩素系溶剤)が使用されていましたが、オゾン層破壊物質として知られており、1995年末に国際的な規制によって製造が禁止され、現在は使用されておりません。また、HCFC-225は代替フロンとして使用されましたが、2020年で製造中止となりました。

出典:ドライクリーニング溶剤について|厚生労働省

これらのフロン溶剤が禁止されたため、代替品として代替フロン(HFC)が開発されました。オゾン層は破壊しませんが、温室効果ガスであり、地球温暖化係数は794と、気候変動に対して甚大な悪影響を及ぼす化学物質です。また、ドライクリーニング溶剤として使用しているのは日本だけで、揮発性有機化合物(VOCs)排出規制対象となっており、クリーニングと公衆衛生に関する審査委員会は「皮膚刺激性や突然変異性はなく,許容濃度に関する規定もないが,ヒトの健康と環境影響に僅かな有害性を認める。」とのこと。

出典:クリーニングと公衆衛生に関する 研究報告書
参考:ハイドロフルオロカーボン類(HFC類)の環境への有害性と被曝リスクの概観

この代替フロン(HFC)は2016年の議定書の改正(キガリ改正)を受け、2019年から規制対象に追加されました。先進国は2036年までに段階的に85%削減、途上国は2045年頃までに段階的に80%削減することが決定しています。

\ HFC365mfcについてもっと詳しく知る /

ヤマダ

ドライクリーニング溶剤は、フィルターや蒸留装置を通じて再利用されます。これにより、溶剤中の汚染物質や異物が除去され、再び使用できる状態になります。要は溶剤の使い回しがなされています。

シリコン系溶剤

D-5(デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどのシロキサン)は、シリコン系溶剤の一種です。このシロキサンは環状シロキサンと呼ばれ、分子量が比較的低いです。使用後の廃棄物は、砂や水、二酸化炭素に分解されるため、環境への負荷が少ないとされています。このクリーニング方法はGreenEarth Cleaningとして知られており、特許も取得されています。

ただし、シロキサンを製造する際には塩素が使用されるため、製造過程において有害物質であるダイオキシンなどが発生する可能性があります。

合成洗剤

よほどこだわっているクリーニング屋以外は、ほとんどが合成洗剤を使用しています。合成洗剤は、汚れを浮かせて分散させる力や乳化効果、除菌作用などを持っており、洗濯物をより効果的に清潔にするために開発されています。業務用の合成洗剤は、石油由来で作られています。

主な中身は下記の通りです。

  • 界面活性剤:合成洗剤の主成分は界面活性剤です。水と油を混ぜ合わせる力を持つ物質で、衣類に付着した汚れや油分を乳化し、水に溶けやすくして除去する役割を果たします。汚れの種類に合わせて、液性が酸性・弱酸性・中性・弱アルカリ性・アルカリ性の5段階に分かれています。
  • 漂白剤:シミや色素のついた汚れを取り除き、白さを回復させる効果があります。酸素系、塩素系、還元型と分かれます。
  • 蛍光増白剤:洗った後により白く見せるために使用します。

柔軟剤

柔軟剤は、洗濯物や衣類を洗った後の仕上げの段階で使用される化学物質で、主に柔軟性を与えたり、衣類の触り心地を滑らかにしたり、静電気を抑制したりする目的で利用されます。柔軟剤の主な成分には、キャットイオン性界面活性剤やポリマー、香料などが含まれています。

防縮剤

主にポリエステルやアクリルなどの合成繊維製品に使用され、洗濯時に繊維の表面にコーティングされることで、繊維が収縮するのを防ぎます。

色止め剤

クリーニングの過程で衣類が水や洗剤と接触した際に染料が溶け出すことや、摩擦によって色素が他の衣類に移ることを防ぐために使用される特殊な化学物質です。

糊剤

仕上げの段階で使用される糊剤には、合成糊、半合成糊、天然糊の3つの種類があります。

  1. 合成糊:合成繊維や化学繊維などの近代的な素材に使用される糊剤です。合成樹脂や合成ポリマーを主成分としており、耐久性や耐水性が高く、繊維への密着力も強い特徴があります。合成糊は一般的に市販されており、広範な用途で利用されています。アイロンの熱で焦げにくく扱いやすいです。
  2. 半合成糊:天然素材と合成素材を組み合わせた糊剤です。例えば、合成樹脂に天然ゴムを混ぜ合わせたり、合成ポリマーと天然糊を併用したりします。半合成糊は、合成糊の利点と天然糊の柔軟性や自然な風合いを組み合わせたものであり、繊維の素材や用途によって選ばれます。
  3. 天然糊:植物由来や動物由来の素材を主成分とした糊剤です。代表的な天然糊としては、デンプンやコーンスターチ、タピオカ、アラビアゴム、動物の骨や皮から抽出されるゼラチンなどがあります。天然糊は古くから利用されており、人や環境に優しい素材として注目され、小さな子どもでも安心して使用できます。柔軟性や接着性は比較的高いですが、耐久性や耐水性は合成糊に比べて劣ることがあります。

【聞いてみた!】大手クリーニング屋で主に使用される溶剤とは?

日本には数多くのクリーニング屋がありますが、その中でも「大手」「老舗」と言われるクリーニング屋さんに限定し、問い合わせてみました。

H社

おそらく一番メジャーであろう、クリーニング屋さんです。石油系溶剤の中身までは教えてくれませんでした。

W社

こちらはメールの問い合わせ先がよくわからなかったので、電話で問い合わせました。工場の方から折り返しお電話をいただきましたが、使用している溶剤は石油系の「なんだかエクソール」とのこと。

ヤマダ

なんだっけなぁ〜と、よくわかっていないようでした。

恐らく、エクソールD40のことだと思います。(エクソールはナフテン系の低臭溶剤です。)せっかくなのでと排水方法、人体や環境への影響なども聞いてみましたが、企業秘密なのかなんなのか濁され教えてくれませんでした。

ヤマダ

知らないだけ…?

「お渡しする頃には、においや成分の残留はないはずです」とおっしゃっていました。

P社

こちらも有名なクリーニング屋さんですが、石油系溶剤およびパークロロエチレンを使用されているとのこと。

U社

問い合わせた店舗では、石油系とのことでした。

F社

E社

こちらも管轄の工場により、使用している溶剤が異なるようです。具体的な溶剤名は教えていただけませんでしたが、別のクリーニング屋さんからのタレコミで、「パークロロエチレンを今でも使用しているのは、こちら(E社)くらいだと思う。」といった内容をいただきました。

化学物質過敏症向けのクリーニング屋の選び方

  • 水洗いは水やお湯洗いのみ、又は天然洗剤・石けんを使用しているか
  • 合成洗剤、柔軟剤、抗菌剤、消臭剤などの化学物質は使用していないか
  • マイクロカプセルは使用していないか
  • 個別洗いに対応しているか
  • 使用する糊は天然糊か
  • ドライ機があると工場内の空気が汚染されていて、衣類に影響してしまう可能性があるため、ドライクリーニングを行なっていない、または別の場所で行なっているか

化学物質過敏症対象のクリーニング屋はとても少ないため、どこかで妥協も必要になるかもしれません。個人によって症状や感受性が異なるため、自身の体験と感じ方を重視してください。

オーガニッククリーニングに要注意!

オーガニッククリーニングを謳っていても、蓋を開けてみれば人体や環境に影響のある有機溶剤が使用されていたり、石鹸で水洗いと言っても、それ以外の工程に化学物質を入れて洗っているところもあれば、抗菌や殺菌加工を施すところもあります。とどめに防虫剤や防虫加工…

また、オーガニックを謳うところには、フッ素系溶剤(ソルカン365mfc=HFC365mfc)を使用されているところが、数多く存在し、

  • 精密機械清掃やフライパンなどの表面加工などにも使用されているため、安全・安心な溶剤
  • 環境にやさしく、人にやさしい

このようなキャッチコピーで、温暖化係数が高いということについて一切触れずに、地球環境に優しいと言って宣伝すること、規制の対象になっているにも関わらず、厚労省が人体に僅かながら有害性があると認めているにも関わらずに、使用し続けることに問題があるんじゃないかと思います。

オーガニックという言葉に騙されないようにしましょう。

さいごに

クリーニングによる曝露の心配をされる化学物質過敏症の方は少なくありません。この記事では、クリーニングの種類や使用される化学物質、さらに化学物質過敏症の方向けのクリーニング屋の選び方についてもお話ししました。

まずは一点預けてみて、よければ継続し、ダメでしたら別の場所に依頼をすることで、曝露被害が減ると思います。ご自身に合うクリーニング屋でしたら、今度は新品で購入した衣類や布団などの「ベイクアウト」に利用するのもおすすめです。

どんな方法を選ぶにせよ、ご自身の健康と快適さが最優先です。自分自身と向き合い、自身に合った方法を選ぶことが大切です。信頼できるクリーニング屋を見つけ、心地よい服や布団の手入れを楽しんでいただければ幸いです。

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