引っ越し、家具や家電を購入前に必読!ベイクアウトのやり方

ベイクアウトのやり方
  • 新しい家具や家電を購入した後、部屋の中に化学物質など嫌なにおいが漂ってしまう
  • 長時間家にいると頭痛や吐き気がするなど、体調が悪化することがある
  • 曝露が心配でなかなか家具や家電が選べない

これらの問題は、室内の空気品質に関連しており、化学物質過敏症の方にとっては家具や家電を選ぶこと自体が悩みの種となっています。そこで登場するのが「ベイクアウト(バーンアウト)」という方法です。これはシックハウス対策にも用いられている方法で、揮発性化学物質を効果的に除去し、健康で快適な生活環境を作り上げることができます。

ただし、ベイクアウトを行う際には注意が必要で、誤った方法で行うと逆効果になることもあります。ベイクアウトの詳細や注意点について詳しく解説していきます。

※なお、ベイクアウトの効果は個人や環境によっても異なります。

もくじ

ベイクアウトとは?

ベイクアウトは、室内や家具、家電などに蓄積した揮発性化学物質を効果的に除去するための手法です。高温を利用して、物質を加熱することで揮発性物質を気化させ、室内空気から排出します。繰り返しベイクアウトを行うことで、化学物質の量を短期間で減らし、室内の空気品質を改善していく事が目的です。

なぜベイクアウトが必要?

ベイクアウトが必要な理由を、室内と新しい家具や家電製品をそれぞれ分けて、詳しく説明します。

室内

建築やリフォームに使われる建材や接着剤、塗料などの内装材料には、例えば揮発性有機化合物(VOC)、ホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなどの化学物質が含まれていることがあります。これらの製品は、施工直後は特に多くの化学物質を放出し、室内の空気中に拡散しますが、時間が経つにつれて減少します。

また、室内には日常的に様々なにおいや空気中の汚染物質が蓄積することがあります。ベイクアウトはこれらのにおいや化学物質を迅速に除去することができます。

新しい家具や家電製品

新しい家具や家電製品には、製造過程で化学物質が使用されることがあります。例えば、家具では使用される木材や接着剤、塗料には揮発性有機化合物が含まれることがあり、家電製品にはプラスチックや塗料、電子部品などが含まれ、これらも化学物質を放出する可能性があります。

そして新しい家具や家電製品は、まだ完全に硬化していない場合があるため、化学物質の放出が続く可能性があります。プラスチック製品も多く存在しますが、プラスチックは液体や可塑剤から固体状態へ変化するプロセスを経て、硬化します。この硬化によって強度が増し、形状を保持する能力が向上し、より耐久性があり、変形や変色しにくくなる場合があります。その他、塗料や接着剤なども、製品が出荷された後も一定の時間を要して完全に硬化する場合があります。そのため、初めの数週間は化学物質の放出が比較的多くなることがあるため、注意が必要です。

また、家具や家電には包装材などカバーが掛けられていることが多いですが、プラスチック包装材にはフタル酸エステルという可塑剤やビニル塩化物(PVC)が使用されることがあり、これらからも化学物質や異臭を放つことがあります。

これらの揮発性有機化合物によって、室内空気の品質を悪化させることがあります。効果的に除去する一つの手法として、ベイクアウトがありますので、必要に応じて行いましょう。

ベイクアウトのメリットとデメリット

メリット

  1. ベイクアウトは比較的簡単に行うことができます
  2. 短期間に化学物質を放出し、その後の室内での化学物質濃度を低下させる可能性があります

デメリット

  1. 温度差と多湿の環境により、建材や家具が剥がれたり歪んだりする可能性があります
  2. 元々揮発しにくかった化学物質が表面に現れ、新たな症状発症の原因となることがあります(リバウンド現象)
  3. ベイクアウト後、一部の化学物質が室内表面に付着する可能性があり、しばらくの間、元の濃度よりも高い状態が続くことがあります
  4. 冬季に行う場合、外気温との大きな温度差により、結露が発生する可能性があります

ベイクアウトは、塗料の溶剤など表面から揮発する物質に対しては有効ですが、接着剤のような材料の隙間や内部を通って徐々に揮発する化学物質に対しては注意が必要で、ベイクアウトが揮発を促進し、結果的に室内の化学物質濃度を一時的に高めてしまう可能性があります。(この場合、2週間〜1ヶ月程度で元の濃度に戻ります。)

このように、ベイクアウトの効果は化学物質の性質や放出源によって異なるため、対策を行う前に原因を正確に特定することが重要です。原因がはっきりしないまま対策を行うと、十分な効果が得られなかったり、逆効果になったりする可能性があります。

ベイクアウトのやり方

部屋全体の場合は、ご自身の休まる場所も必要になりますので、一部屋ずつ行いましょう。また、家具や家電は天日干しの場合は庭やベランダなど、室内で行う場合は使用していない部屋で行うのが望ましいです。季節差があったり、においや化学物質で体調不良となる可能性があります。

室内の場合

1、準備

  • 温度や湿度のコントロールが出来ず、室温40度以上・湿度80%以上となる懸念がある場合のみOA機器などを搬出します。
  • 設置されている家具などもベイクアウトされますので、扉や引き出しは開けておきましょう。
  • 家具を壁から離し、空気の通り道を作ります。
  • 窓やドアを閉め切ります。

2、温度設定

加熱できる装置(ヒーターなど)を使用し、室内温度を30~35度程度まで上げます。湿度を60%程度に上げるとさらに効果が上がるため、加湿器などで調節しましょう。室内温度30~35度というのは、家具や建材を痛めないための温度です。温度が高いほうが効果が大きいですが、温度を上げすぎると内装材が剥がれたり、建具が反ったりするので注意が必要です。

温度差が大きい場合や湿度が高い場合、結露が発生する可能性があります。春・秋の外気温が15度以下であれば、室温を35度以下に設定し、夏は40度前後、冬など外気温が10度以下になれば屋外の空気の乾燥度合いを考慮し、作業を検討しましょう。

3、加熱時間

高温多湿状態を保ち、一定時間放置します。一般的に数時間〜数日かかります。扇風機やサーキュレーターなどを使用し、室内の空気を循環させ、湿度・温度が部屋全体に広がるようにするとより効果的です。

4、換気

ベイクアウト後は、揮発した化学物質を屋外に排出するため、十分な換気行いましょう。これを数回繰り返すことで、より効果が得られます。(通常3〜5回程度)

家具の場合

1、準備

家具の引き出しを開けるなどして、空気に触れる部分を多くします。

2、温度設定

加熱できる装置(ヒーターなど)を使用し、室内温度を30~35度程度まで上げます。湿度を60%程度に上げるとさらに効果が上がるため、加湿器などで調節しましょう。

3、加熱時間

一定時間放置します。一般的に数時間〜数日かかります。

4、換気

ベイクアウト後は十分な換気行いましょう。これを数回繰り返すことで、より効果が得られます。(通常3回〜5回程度)

家電製品の場合

家電製品の場合は、天日干しをしたり、通電させることが大切ですが、エビデンス等がないので個人の感覚になってくると思います。

洗濯機

新しく購入する際は、中に蓋がついていないタイプのもの、温風乾燥機能のついていないもの、縦型タイプ、容量の大きいものを選ばれるといいでしょう。CSの方はよく、アクア製やシャープ製を使用される方が多い印象です。

お湯60度でつけ置き洗い100分を繰り返し行います。たっぷりの水で重さをかけて回すことで、モーター周りの揮発が進みます。

ヤマダ

最大温度が洗濯機により異りますので、説明書をご覧になってください。

また、乾燥機と一体型の洗濯機はゴムを多く使用しているため、洗濯機単体よりもにおう場合があります。窓を開けたり扇風機を回し、強制的に換気するのも一つの手です。

ヒーター

CS発症者にはエアコンは必需品です。

化学物質過敏症の暮らしと住まい: どうすれば良いのか? (プロブレムQ&A)

これは室内の温度と湿度を保つために必要という話ではありますが、CSの方が暖をとるにもエアコンがベストです。ですが、家についていなかったり、あっても使えない方もいらっしゃいますよね。そういった方は遠赤外線ヒーター、カーボンヒーター、オイルヒーターなどを使用される方が多い印象です。

ヒーターによくある問題は、長期間保管した場合にエレメント内に水分が入り込むことです。この水分を除去するために通電し、ベイクアウトが必要となりますが、スイッチを入れて早ければ数時間〜長いと1ヶ月〜数ヶ月とかかる場合があります。

においが充満するので、空いている部屋やベランダで行われることをおすすめします。スイッチはずっと入れっぱなしではなく、つけたり消したりし、火災には十分にお気をつけください。

冷蔵庫

小型冷蔵庫の場合はベランダなどに出し、通電していない状態でドアを全て開けて放置します。中のプラスチックなども全て出して空の状態にします。

大型冷蔵庫の場合は移動が難しいので、定位置にてベイクアウトを行う必要があります。プラスチックのケース等は全て出し、ベランダなどに放置します。冷蔵庫内に活性炭や竹炭、麻炭を詰め込み、通電します。中のファンが周り、化学物質やにおいが炭に吸い込まれていきます。ただし、炭の取り扱いには十分に注意が必要で、化学物質を吸着し切った炭は放出を始めます。最初は3日に一度、1週間に一度、2週間一度と取り替えていきましょう。

ヤマダ

メーカーによって化学的なにおいレベルが全く違います。できるだけ当初からにおいの少ないものを選びましょう。その他の家電製品も、炭をうまく活用してみるのがおすすめです!

農薬に反応してしまう方は無農薬の炭をお勧めします。私は農薬・化学肥料不使用で栽培された無毒大麻「とちぎしろ」を使った麻炭を使用しています。

\ 農薬・化学肥料不使用の麻炭をみてみる! /

ヤマダ

炭はいたるところで、しかもたくさん使うので、反応のない方は100均とかで売っているものでもいいと思います!

\洗濯の際にも使用することがあります/

その他

本や教科書

インクやカバー、接着剤などがにおう場合があります。そんな時はピンチ付きハンガーで本を干すといいでしょう。教科書などは使うページを前もって干しておくとさらにいいと思います。

服やタオル・毛布など

洗濯して干す、を繰り返すのも大事ですが、夏場は黒いビニール袋に入れて車内に放置するのもおすすめです。高温状態を保つことで、化学物質が揮発しやすくなり、新しい衣類やタオルからの化学物質も効率的に除去されます。この方法は移香のある衣類にも利用できますが、注意点として、袋を開封する際の曝露には注意が必要です。

ヤマダ

あくまでも個人の感想です。

使用可能な状態になるまでの時間も考慮する

家電製品は特に、ものによって使用できる状態になるまで数ヶ月〜1年、2年とかかる場合があります。使用したい時期に合わせて、十分に余裕をもってベイクアウトや揮発物質の除去を行うことで、家電製品を安心して使用することができます。

ベイクアウトを業者へ依頼する

ベイクアウトを行なってくれる業者がありますので、そちらに依頼するのも一つの手です。こちらでは、室内温度を大幅に上下して、プラスチックの膨張収縮を繰り返すことにより放散を促してくれます。

\ ベイクアウトの相談をしてみる /

ヤマダ

フサモトさんはベイクアウトの他にも、電気工事や取り付け、家電交換などCS対応で行ってくださいます。(ひとりで対応できない工事はCS対応困難です)

ベイクアウトの注意点

  1. 安全性確保:ベイクアウトを行う際には、適切な加熱装置を使用し、火災や怪我のリスクを最小限に抑えるようにしましょう。
  2. 環境の把握:室内環境を把握するために、温湿度計を使用して室内の温度と湿度を確認しましょう。特に密閉住宅では、石油ヒーターの使用による火災リスクや酸素欠乏、不完全燃焼による有害物質の発生など注意が必要です。
  3. 結露の管理:多湿な環境では、結露が問題となる場合があります。作業中に結露が起こりやすい場合は、加湿器を止めたり、入り口付近に加湿器を配置したりすることで作業しやすくなります。
  4. 時間帯の考慮:ベイクアウト作業を夜間に行う場合、深夜電力を利用でき、電気代が安くなるかもしれませんが、屋外との温度差や夜露による結露のリスクが高まることに留意しましょう。
  5. 換気:作業中および作業後は、室内空気の汚染を考慮し、窓を開放し換気扇や扇風機などを使用して、室内の空気を迅速に排出することが重要です。作業後は直ちに退出しましょう。

室内空気中の有害な化学物質を効果的に削減するには、ベークアウト完了後に十分な換気時間が必要であることが強調されています。換気をせず、7日間密閉を維持すると、有害化学物質の濃度が増加することが研究で報告されています。

出典:Abdelaziz Mahmoud, Naglaa Sami, and Chuloh Jung. 2023. “Analyzing the Bake-Out Effect in Winter for the Enhancement of Indoor Air Quality at New Apartments in UAE” Buildings 13, no. 4: 846.

ベイクアウトの効果は?

加熱温度(38℃)、加熱時間(72h)のベイクアウトで、建材質部位毎のホルムアルデヒド の発生量減少率を明らかにしており、床(6.5〜34%)、壁(11〜59%)、天井(36 〜56%)の低減効果を報告しています。

出典:室内化学物質汚染が低減化対策としてのべ イクアウトの効果(その2)、室内VOC 、ホルムアルデヒド汚染に関する研究(その3)日本建築学会計画系論文集、第557号、pp73 〜79、2002.7

同一条件下でのベークアウト後、TVOCの放出率は、床(20.4〜27.9%)、壁(9.21〜29.3%)、天井(7.4〜40.0%)減少することが判明した。

出典:室内化学物質の発生源管理技術としてのベークアウトの効果(その3):VOCとホルムアルデヒドによる室内空気汚染に関する研究(その4)日本建築学会論文集) 68(568):57-62

竣工後2~4ヶ月の新築住宅においてベイクアウト(約30℃、24時間~72時間)を実施し、実施前後における化学物質の室内濃度変化を測定した研究報告によると、ホルムアルデヒド濃度が約23~52%減衰し、加熱温度を高くするとその効果が増大すること、揮発性有機化合物に対しては、減衰効果が認められないケース(濃度が上昇するリバウンド現象)と数十%の減衰効果が認められたケースがあること、ベイクアウトの実施時間を延長することでその効果が増大する傾向が観察されたことなどが報告されています。

また、実際の室内では何種類もの建材が使用されており、化学物質放散量の異なる建材間でのベイクアウト効果の影響が懸念されます。放散量の差が大きな建材が混在する状況下では、ベイクアウト後において、低放散量の建材に再付着したホルムアルデヒドや揮発性有機化合物の放散により、一時的に放散量が大きくなる可能性が示唆されており、ベイクアウト直後の徹底した換気の必要性が指摘されています。

出典:新築住宅の室内化学物質汚染低減化対策について, 平成12年度室内環境学会総会 講演集, Vol. 3, No. 2, pp26-33, 2000.12

(1)ベイクアウトの時間は長いほど効果が見込めるが, 少なくとも24時間以上のベイ クアウトがより有効と考えられる。

(2) ベイクアウト中における各建材からのTVOC放散は, ベイクアウト初期に多く,特に加工後4時間しか経過していない壁紙+ラワンの場合は、この傾向が著しく認められた。

(3)試験片を切り離した放散量測定から, ベイクアウトにより建材内部のHCHO放散量が低下することを確認した。

(4)HCHOやVOCs放散量が異なる建材が混在する状況では,ベイクアウト後の一時的な建材への再吸着と脱着による放散量増大の可能性があること確認した。

(5)換気有りのベイクアウトにより, 建材への再吸着量を低くする可能性が有ること示した。

(6)建材からのHCHOの放散には,保管時の換気回数が多いほど,放散量の低下が早いことを確認した。

(7)ベイクアウトによる室内汚染状況の早期低減の可能性を確認した。特に,施工事情で出庫直後の建材を高気密住宅などの内装に使用した場合, ベイクアウトにより初期放散量を早期に低減できる可能性があることを明らかにした。

(中略)

1. 建材レベルの実験から, ベイクアウトによる低減は試験片の種類に関係なく、建材の履歴や表面及び表面近傍の化学物質量がベイクアウト効果を左右することを確認した。

2. 木造住宅等の室内において, 室温20°C程度における TVOC濃度が1700μg/m3以上の場合, 加熱温度40°C, 加熱時間 24時間以上のベイクアウトによって, TVOC濃度で約30%の低減が期待できると考えられる。ただし, TVOC 中に占める脂肪族炭化水素類,芳香族 炭化水素類及びアルコール類の合計が約40%~60%以上を前提とする。

3.本実験結果によれば, 木造住宅等の室内において, 室温20°C程度における TVOC 濃 度が800μg/m3以下で,脂肪族炭化水素類,芳香族炭化水素類及びアルコール類の合計がTVOC濃度の25%以下である場合は, 加熱温度 40°C, 加熱時間 24時間未満のベイクア ウトを実施しても, TVOC濃度で10%以上の低減は期待できない。そのため, 厚生労働省のガイドライン値400μg/m3を問題とするような場合は,慎重な検討が必要である。

4. ホルムアルデヒド濃度が低減目的である場合は、室温25°Cにおける厚生労働省のガイドライン値80ppbを問題とする場合は,ベイクアウトによる低減が期待できる。

実際の状況は, 住宅工法の相違, 内装の一部のみの改装, 建材の相違、生活状況の相違、自然環境の相違等により多様であるため,本研究結果が一様に適合するとは限らない。しかし,室内空気質汚染低減作業に際して, それぞれの住宅で,ここに挙げた諸条件を把握できるならば、本実験結果はベイクアウト実施の可否判断に対して, 十分な判断材料を提供出来ていると考える。

引用:化学物質簡易測定法の開発とベイクアウトによる室内空気室汚染の低減効果に関する研究

さいごに

化学物質過敏症の方にとって新品の家具や家電製品を購入するのは、とてもハードルが高いなと感じています。できれば中古品でとも思いますが、今度は香料問題があったりと、一筋縄ではいきません。

ヤマダ

フリマサイトなどでは、「#香料フリー」と記載されている出品があります。香りに配慮された方による出品率が高いので、チェックしてみてください。

また、新品のものでも店頭に長いこと出されているものを購入させてもらったり、事前に買いに行ってにおいなど確認するのも一つの方法です。

記載した注意点を守り、ベイクアウトをうまく活用しながら化学物質を除去し、快適に過ごすことができますように。

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