化学物質過敏症は精神病ではない理由

化学物質過敏症は精神病ではない理由

「化学物質過敏症です」というと、

  • 気にしすぎ、神経質
  • 嘘の病気
  • カルト、宗教
  • 精神病、心の病

と言われることも、少なくないでしょう。その言葉自体が、化学物質過敏症患者を精神的に追い詰めているということに、気づいてほしいものです…これはマイノリティが原因で、医師であっても精神病で片付けてしまう方が少なくないことから、一般的にもこのように思われているのかもしれません。

化学物質過敏症と診断された患者に対して、認知行動療法や抗うつ薬による精神医学的な治療、あるいは祈りなどが功を奏した例が報告されている。シックハウス関連の厚生労働省資料にも「化学物質曝露と症状の関係は否定的」「科学的には化学物質曝露と身体反応には関連はなく,症状の原因が化学物質とはいえない」との記載がある。

化学物質過敏症|wikipedia

また、肯定的見解も多いですが、このように懐疑的見解も多く、「化学物質過敏症=精神病」という方程式が出来上がっているのではと、推測します。化学物質過敏症は精神病でも心の病でもありません。その理由を述べてまいります。

もくじ

化学物質過敏症=精神病ではない、客観的証拠

精神病のみの治療では化学物質過敏症が解決することは示されていない。

Chemical Intolerance in Primary Care Settings: Prevalence, Comorbidity, and Outcomes

医師らは、 MCS患者の精神症状は環境化学物質の毒性影響、または慢性中毒に対する心理的反応として考慮されるべきだと主張している。

参考:Bell IR. White paper: Neuropsychiatric aspects of sensitivity to low-level chemicals: a neural sensitization model. Toxicol Ind Health. 1994;10:277–312. 

参考:Davidoff AL, Keyl PM. Symptoms and health status in individuals with multiple chemical sensitivities syndrome from four reported sensitizing exposures and a general population comparison group. Arch Environ Health. 1996;51:201–213. doi: 10.1080/00039896.1996.9936017.

MCS患者で引き起こされる化学反応は、PCOなどの客観的な生物学的マーカーと関連する不安発作を誘発することが実証されています。

 Leznoff A. Provocative challenges in patients with multiple chemical sensitivity. J Allergy Clin Immunol. 1997;99:438–442. doi: 10.1016/S0091-6749(97)70067-8.

東京大学心身医学教室の斉藤真理子博士らによる最近の研究は、心身症仮説の証拠が不足していることを示しています。彼らの結論は、「MCS 患者は、化学物質のない環境下では身体症状も精神症状も示さず、化学物質に曝露された場合にのみ症状が誘発される可能性がある」というものです。

出典:Multiple chemical sensitivity

化学物質過敏症=精神病ではない!厚労省の見解

2009年3月17日、参議院環境委員会で岡崎トミ子議員が化学物質過敏症について質問をし、中尾昭弘厚生労働大臣官房審議官が答弁しました。

岡崎トミ子

化学物質過敏症が心因性であることを示唆していると受け取られかねないマニュアルがまとめられまして、患者を中心に心配が広がっております。この化学物質過敏症の患者の多くは、周囲の無理解、例えば、妻は夫から無理解でごろごろしているというふうに言われたり、子供もそんなふうに言われたり、子供たちももう少し大人になってからでもなかなか理解されないという中にあったわけなんです。

 そこで、その化学物質過敏症が心因性であるということについてどうも通達があったということですので、これは政府の公式見解ではないということをしっかり確認をするということと、自治体担当者に対して徹底することを求めたいと思います。

中尾昭弘

お答えいたします。

 御指摘の点は、シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアルというものでございまして、厚生労働科学研究費補助金により平成十八年度と十九年度に行いましたシックハウス症候群の実態解明及び具体的対応方策に関する研究に基づく成果物でございます。

 御指摘の記述につきましては、研究班が過去の文献の整理をしたものでございまして、化学物質過敏症が心因性の疾患であることを示したものではないと承知しておりますが、いずれにいたしましても、御指摘の記述につきましては、執筆をした研究班の知見でありまして、厚生労働省の公式見解ではないということでございます。

 この点につきましては、今月九日に開催されました生活衛生関係技術担当者研修会におきまして、本冊子は厚生労働科学研究における成果物であり、厚生労働省としての見解ではないとの旨を担当者の方から保健所の職員に対しまして周知をしたところでございます。

2009年3月17日|第171回国会 参議院環境委員会 第2号|厚労省シックハウス症候群対策マニュアル問題に関する岡崎トミ子参議院議員の質問と政府答弁

そもそも化学物質過敏症は病名登録がされている

2009年10月1日から、厚生労働省は標準病名マスターに化学物質過敏症を登録し、カルテや診療報酬明細書(レセプト)に記載できるようになりました。こちらは中毒、他及び詳細不明の物質の毒作用(ICD-10のT65.9)の項に分類されており、保険医療の対象となっています。精神疾患の分類ではありませんし、障害年金を申請できる疾病です。

参考:社会保険表章用疾病分類|厚生労働省

>障害年金の記事は現在準備中です。

また、化学物質過敏症における障害年金申請の際に提出する診断書は、『血液・造血器・その他の障害用の様式第120号の7』なので、精神科医が記載するべきではなく、記載例も内科医のものとなっております。

参考:化学物質過敏症の診断書記載例及び認定事例(その他の障害用診断書)(PDF 3,034KB)|日本年金機構

【実害】化学物質過敏症による健康被害を生じさせた法的責任

日本でも化学物質による損害賠償請求、労災がいくつか報告されています。これらの事件は、化学物質を原因とする化学物質過敏症の発症による具体的な実害が証明されたものです。

化学物質過敏症は精神病ではない!よくわかる動画4つ

さいごに

肉体的にも精神的にも不安定な化学物質過敏症患者は多いと思います。化学物質過敏症の症状ひとつともされる「攻撃的になる」そうなられてしまう方も少なからずいらっしゃるため、その一部の方の言動・行動により、化学物質過敏症=精神疾患と思われてしまう場合もあるかと思います。

ですが、ごくごく一部であり、化学物質過敏症に限らず誰にでもあることですし、根拠もなく全ての化学物質過敏症患者は精神病、心の病と決めつけられることは非常に遺憾です。化学物質過敏症は保険適用の疾病で、誰にでも発症する可能性があります。理解して欲しいとは言いませんので、せめて知るところから始めていただけませんでしょうか。

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