- 虫歯ができて歯が痛い
- 歯が欠けた、割れた、銀歯が取れた
- 歯周病などで歯茎が腫れている
そんな状態になっても、化学物質過敏症の方は気軽に歯医者さんへ行くことができません。そもそも一般的な歯科医院に入ることさえ、難しいのです。入れたとしても歯科治療には化学物質はつきもので、その対応の難しさから歯科医院から治療拒否をされてしまうことも少なくありません。諦めて放置し、結果悪化してしまいより治療が困難になる…そんな悪循環になってしまうこともあったりと、次から次へと不安や心配事が押し寄せてきますよね。
東京医科歯科大学の相田潤教授らは、日常生活でストレスを感じる機会が多い人ほど口や歯で健康上の問題を抱えやすいことを明らかにした。抱えるストレスが最も多かったグループは最少のグループに比べて、歯の痛みなど問題のある人の割合が約7倍になった。
ストレス多いほど歯にトラブル、東京医科歯科大が解明|日本経済新聞
ましてや日常生活で精神的にも肉体的にもしんどい思いをし、日々ストレスを感じる化学物質過敏症の方も多いでしょう。故に口腔内での問題を抱えやすいと言われています。
本記事では、歯科治療において化学物質過敏症の方々が直面するであろう問題に焦点を当て、ひとつひとつ解決していきたいと思います。安心して歯科治療に臨むことが出来ましたら幸いです。
歯科治療で使用される化学物質の種類とリスクや対策
化学物質過敏症の方が歯科治療を受ける場合、使用される化学物質による反応のリスクがあります。また、これらの化学物質により、化学物質過敏症を発症された方もいらっしゃるでしょう。
以下に、歯科治療で使用される主な化学物質とそれに関連するリスクや対策をまとめました。
歯科治療の材料
メタル
歯科治療で一般的に使用されるメタル材料は、金銀パラジウム合金で、いわゆる銀歯です。この銀歯には、金12%、銀46%、パラジウム20%、銅20%、その他少量の銅、スズ、亜鉛などが含まれており、金属アレルギーを引き起こす危険性もいわれています。ドイツなどの医療先進国では、パラジウムが体に与える悪影響を考慮して、「銅を含有するパラジウム合金は使用しないこと」と勧告されています。
適切な材料を選択する必要があり、その中のひとつとしてノンメタル治療があります。これはセラミック、グラスファイバー、ジルコニアなどの金属を使わない歯科材料に置き換えができる場合もあるので、事前にアレルギーテストをされることをおすすめします。また、ノンメタルよりも高カラット金プラチナ合金など、自費の金属の方が合う方もいらっしゃいます。ノンメタル治療には樹脂やハイブリッドセラミックもありますが、レジンを使用するため、化学物質過敏症の方は避けられた方が良いでしょう。
世界的に大ベストセラーとなった著書「病気にならない人は知っている」では、歯科金属の害についても記載され、また、歯科金属による健康被害の症状は、金属が直接接触している口腔内ではなく、そこから離れた遠隔の皮膚に現れることが圧倒的に多いことなど述べられています。
アマルガムは、100年以上にわたり世界中で一般的に使用されてきた歯科材料であり、金銀パラジウム合金よりも広く使用されていました。アマルガムは、約50%の水銀を含む歯科金属です。しかし、その危険性から、スウェーデン、イギリス、デンマークなど一部の国ではアマルガムの使用が禁止されており、日本でも2016年まで保険適用材料として使用されていましたが、現在は廃止され、自費診療でのみ使用可能です。
35歳以上の70%の人に、このアマルガムが使われていると言われています…
このアマルガムを外すことで、一部の人々には化学物質過敏症の症状が緩和されるという報告もありますが、アマルガムを除去する際には注意が必要です。アマルガムを削る際には切削ドリルが使用されますが、このプロセスでは危険な水銀を含んだ金属片が飛散したり、摩擦熱によって水銀蒸気が発生する可能性があります。削り粉はもちろん有毒ですが、気体の水銀蒸気はさらに危険であり、吸入しないよう細心の注意が必要です。
セラミック
セラミックは、審美的な修復に使用される材料であり、自然な歯の見た目を再現することができます。化学物質過敏症の方にとっては、セラミック自体が一般的に安全であり、アレルギー反応のリスクは低いとされています。ただし、セラミックにレジンが混ざった素材の「ハイブリッドセラミック」や、見た目の表側の部分のみセラミックスを使われている「メタルボンド」などは注意が必要で、人によってアレルギー反応を引き起こす可能性があります。
「オールセラミック」や、人工ダイヤモンドを使用した「ジルコニアセラミック」などを検討するのがおすすめではありますが、オールセラミックと言えども、100%純粋なセラミックと呼ばれる材料は存在しません。セラミックとは、非金属の無機材料の総称で、主に酸化物、窒化物、カーバイド、ガラスなどが含まれます。製造プロセスやその他添加物、さらに、補強や結合のために他の成分や材料が含まれていることが一般的です。オールセラミックの中には、アルミナと呼ばれる酸化アルミニウムが含有されているものもあるので、注意が必要です。
アクリル樹脂
歯の修復や入れ歯に使用されるアクリル樹脂は、一部の方にとってアレルギー反応を引き起こす可能性があります。アクリル樹脂に含まれる成分や可塑剤(フタル酸エステルなど)、硬化剤(過酸化ベンゾイルなど)、アクリル樹脂の加工や修正時に発生する粉塵や蒸気に対して刺激やアレルギー症状を引き起こす可能性があるため、事前にアレルギーテストを行い、適切な材料を選択する必要があります。
接着剤
歯科治療では、さまざまな材料を固定するために接着剤が使用されます。例えば、セラミックやメタルなどの歯の修復物を歯に接着する際に使用され、歯や修復物の表面を処理し、材料同士を強固に結合させる役割があります。アクリル系接着剤やレジン接着剤などが一般的に使用されますが、モノマーを含むため、化学物質過敏症の方にとってはアレルギー反応を引き起こす可能性があります。
モノマーとは、小さなパズルのピースのようなものです。ピースそれぞれは単体で小さくても、組み合わせることで大きなパズルを作ることができます。モノマーも同じで、化学の世界では物質を作るための基本的な部品のような存在です。
たくさんのピース(モノマー)が組み合わさってできた大きなパズル。これをポリマーと言います。紙おむつや生理ナプキンには、一次的マイクロプラスチックのマイクロビーズである高吸水性高分子(高分子ポリマー)が使用されています。
充填
虫歯治療や歯の欠損部分を埋めたり修復したりするために使用される材料です。レジン(コンポジットレジン)やセメントが主な成分で、歯の損傷部分に適切に形成し、咬合力や審美性を回復させる役割を果たします。
レジンは接着剤、増粘剤、硬化剤、光起動剤から成り立っており、光を照射することで硬化します。化学物質過敏症の人は、モノマーに反応してアレルギー症状を起こす可能性があります。セメントはグラスアイオノマーセメント、レジンセメント、セラミックセメントなど。主に歯冠、インレー、アンレー(オンレー)のセットに使用されます。種類によっては硬化する前にアミン化合物を放出するため、アレルギー反応を起こす可能性があります。
揮発性が高く、鼻や喉の刺激を引き起こす可能性があるのです。
漂白剤
歯科治療というよりも、審美的治療の一環として使用されることが多い漂白剤(ホワイトニング)。無髄歯(神経を取った歯)に行うウォーキングブリーチ、有髄歯(神経を取っていない歯)に行うオフィスブリーチとホームブリーチがあり、これらを組み合わせて行うこともあります。
歯の漂白(ブリーチ)効果が学術的に認められているものは、いずれも過酸化物からなるホワイトニング剤を使用する方法で、医薬品医療機器等法(旧薬事法)上、医療用具(歯科材料)とされており、歯科医師または歯科衛生士の資格を持たない者がこれを用いて施術する事は違法行為になります。
歯のホワイトニングについて|一般社団法人 日本歯科審美学会
歯科で使用される主な漂白剤は、過酸化水素、カルバミド過酸化物です。
過酸化水素は、高濃度で使用されると歯肉や口腔内の組織に刺激を与え、炎症を引き起こす可能性があり、低濃度で使用される場合は、一般的に副作用は少ないとされていますが、化学物質過敏症患者に対しては注意が必要です。カルバミド過酸化物は、過酸化水素よりも安定した化合物であり、より長時間効果が持続するため、歯科治療でよく使用されます。しかし、高濃度で使用される場合は、口腔内の組織に刺激を与えて炎症を引き起こす可能性があったり、低濃度で使用される場合でも、化学物質過敏症患者には副作用が発生する可能性があるため、注意が必要です。
印象材料
印象材料は、歯科治療において歯や口腔の形状を再現するために使用される材料です。主な印象材料には、アルジネートと寒天、シリコーンがあります。
歯医者さんでピンク色の少し冷たくプルプルして、むにゅっとした材料を、口の中に入れられた経験はありませんか?あれはアルジネートや寒天を用いた連合印象です。なんか不快で、ピンクが乗ってるトレーも大きくて、おえーっとなりながら入れられた記憶があります…
アルジネート(アルギン酸)
アルジネートの主成分はアルギン酸ナトリウムで、昆布やわかめなどの海藻からとれる成分であり、かまぼこや人工いくらの原料として使われる成分です。粉末状のものとペースト状のものがあり、粉末状のものには水を、ペースト状のものには石膏を加えて練り、クリーム状にして歯や口腔に装着して硬化させます。アルジネートは比較的低コストで入手しやすいですが、常に安定した状態で使うには難しかったり、時間とともに変化しやすい材質のため、精密な型採りの材料としては不向きです。
寒天
材料は海藻から作られる寒天。高温で溶けて低温で固まる性質を利用して型を採ります。弾力があり、ゼリー状でキメが細かくいですが、強度がなくちぎれたり、変形しやすい材質のため、安定した精度を求めると不安が残る材質です。
アルジネートと寒天のそれぞれの利点・欠点を生かした2つの材質を合わせて使う「連合印象」が、最も多く使用されています。
シリコーン(合成ゴム)
シリコーンは柔軟で粘性のある材料で、歯科治療において非常に一般的に使用されます。シリコーンの特徴は、高い粘度と伸縮性、耐久性、優れた詳細再現能力です。シリコーンは耐久性が高く、長期間保存することができます。また、硬化後も柔軟性を保ちながら形状を保持するため、取り外しや再挿入が容易です。シリコーンは粘土のように扱いやすく、患者の口内に適切に配置することができます。一部の方はシリコーンに対してアレルギー反応を起こすことがあり、アレルギー症状としては、かゆみ、発疹、蕁麻疹などが現れることがあります。
最近はこれらの印象材料を使用せず、トレーも口に入れることなく型取りができる「光学印象」と言うものもあります。口の中をスキャンし、そのデータを3Dプリンタで出力し、修復物を作製する方法です。光学印象は歯型を取らず、データとして取り込むためひずみなどはかなり少ないです。マウスピースの矯正など幅広く利用可能です。
麻酔薬
一般的な歯科医院で行なわれる麻酔は局所麻酔で、表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔の3種類あります。
表面麻酔
後述する麻酔の注射の痛みを和らげるために、麻酔薬(ジェル状やスプレータイプのもの)を歯茎など口の粘膜に塗って表面の感覚を麻痺させるものです。表面麻酔薬の主成分はアミノ安息香酸エチルで、副作用として、むくみ、じんましん、めまい、眠気、不安感、興奮、嘔吐などがあげられます。子ども用の表面麻酔薬にはストロベリーやバナナなどの香りや味がすることがあります。具体的に使用される成分は製品ごとに異なりますが、一般的な例としては合成香料、甘味料などがあげられます。
浸潤麻酔・伝達麻酔
浸潤麻酔は一般的に歯科で行う麻酔のことで、治療する歯の近くの歯茎に注射をして麻酔薬を注入します。伝達麻酔は下の奥歯の虫歯治療や親知らずの抜歯のときに使用しますが、この部位は比較的麻酔が効きづらい場所です。そこで、脳から出た神経が下顎骨に入る手前のところに麻酔することで、舌や唇を含めて広範囲でよく効く麻酔が得られます。
浸潤麻酔や伝達麻酔に使う麻酔薬は、麻酔成分のリドカイン塩酸塩(キシロカイン)と血管収縮剤であるアドレナリンが主流です。その他プロピトカインやメピバカインなどがあげられます。化学物質過敏症の方は、これらの薬剤で血圧上昇や動悸、悪心、痙攣、吐き気、意識混濁、眠気、不安感などが起こる可能性があったり、薬剤に含まれる防腐剤に対してもアレルギー反応を起こす可能性があります。
また、麻酔薬は他の薬剤に比べ進歩が早いため、その都度確認しましょう。この手の本を手元に置いておくと安心だと思います。
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薬剤
消毒薬
歯科治療では、アルコール(エタノール、イソプロパノール)、塩化ベンザルコニウム(抗菌剤)、クロルヘキシジン(抗菌作用)、過酸化水素(抗菌作用・漂白作用)、ジクロルイソシアヌル酸ナトリウム(殺菌剤)などの消毒薬が使用されることがあります。これらの薬剤に反応して化学物質過敏症の方は、かゆみや発疹、蕁麻疹、口内乾燥、舌のしびれなどのアレルギー症状を起こす可能性があります。
フッ素
フッ素は歯科治療において主に歯の強化や虫歯予防のために使用されます。フッ素は歯の表面に結合し、エナメル質を強化して酸による侵食を防ぐ効果があるとされますが、化学物質過敏症の方はフッ素に対して過敏反応を起こすことがあります。
歯科医療で使用されるフッ素は、フッ化ナトリウムと呼ばれる安全性の高いフッ化物であり、危険性はないとされていますが、反対に有害性を主張する方も少なくありません。
WHOでは6歳未満の子供に使用禁止!とされている。
当医院がフッ素を使わない理由|「抜かずに治す」太田歯科医院
- 殺虫剤の主原料として用いられている。
- 先進国は水道水にフッ素添加をしていない。
- 史上最悪の汚染物質と言われている。
- 世界的に行われていた調査で飲み水にフッ素添加しても虫歯は減らないという事が確認されている。
- アメリカの40%以上の10代の子供にフッ素過剰摂取の症状が見られる(歯牙フッ素症)。
- エナメル質の性質がフッ素を取り込む事によって、長期的にみると脆く欠けやすくなる。
- 脳神経系で鍵となる酸素系を阻害して神経機能を低下させる。
- 体内に残留して、アレルギー疾患、癌、動脈硬化、アルツハイマー病、糖尿病、骨疾患の原因となる
- フッ素は母親の胎盤を通過出来るため、胎児の脳発達に大きなダメージを与える可能性がある。
- フッ素は消化管内でカルシウムと結合し、カルシウム不足による骨粗しょう症を起こし、骨折する可能性がある。
- 宝塚斑状歯事件
1971年に宝塚市の特定地区に斑状歯が高確率で見られる事が分かった。歯のフッ素症は、水道水にもともと含まれるフッ素の化合物(フッ化物)、水道水フッ化物添加、歯磨き粉の飲み込みなどによるフッ化物の過剰摂取により、歯に褐色の斑点や染みができる症状を指す。中等度の症例では、エナメル質にいくつかの白い点や小さな孔が生じる。より重症だと、茶色い染みが生じる。その結果、歯の見栄えが悪くなる。6ヶ月から5歳までの歯の発生期にフッ化物を過剰摂取すると生じる。口腔に萌出した歯には、発生しない。歯のフッ素症は通常永久歯に発生し、ときおり乳歯にも発生する- 2002年に沖縄県旧具志川村で全国初の水道水へのフッ素導入の計画が進んでいたが、健康面の不安を抱く住民の反対で中止となった。
さまざまな情報を取捨選択した上で、もし使用される場合はアレルギー検査をなされることをおすすめします。
抗生物質
抗生物質は細菌や微生物の増殖を抑制するために使用され、歯科治療では主に歯周病や歯根の感染、手術後の感染予防など特定の状況でのみ使用されることが一般的です。主に使用される抗生物質には、ジスロマック、アジスロシン、アモキシシリン、クラリスロマイシン、メトロニダゾール、フロモックス、セフカペンピボキシル、クラビット、レボフロキサシンなどがあります。
ただし、抗生物質は適切に使用しないと抗生物質耐性菌の発生や副作用のリスク、一部の抗生物質は腸内環境に影響を与えるため、腸のトラブルや消化器系の問題が生じることもあります。化学物質過敏症の方は、抗生物質に対してアレルギー反応を起こす可能性があり、症状としては、皮膚のかゆみや発疹、呼吸困難、浮腫などが挙げられます。
鎮痛剤
鎮痛剤は歯の痛みや不快感を軽減するために使用され、一般的には非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアセトアミノフェン(パラセタモール)、ロキソニン、ボルタレン、カロナールが使用されます。長期間連続して使用すると胃腸障害や腎臓への負担により腎炎や急性腎不全があったり、蕁麻疹や呼吸困難、消化器系のトラブルなどの症状を引き起こすことがあります。
鎮痛剤は肝臓中のグルタチオンを枯渇させ化学物質過敏症症状を悪化させると言われているため、よほどのことがない限り、化学物質過敏症の方は鎮痛剤の摂取は控えた方がいいと思います。
抗炎症剤
抗炎症剤は歯周病や口内炎などの炎症を抑えるために使用されます。一般的にはポンタール・ロキソニン・ボルタレンが使用されます。局所に刺激があると、体はプロスタグランジンという炎症と痛みの原因となる物質を作り出します。抗炎症剤はそのプロスタグランジンの作れなくする作用があるため、痛みと炎症が治まります。長期間使用すると副作用のリスクがあり、副作用としては、免疫抑制や内分泌系の障害、骨密度の低下などが挙げられます。
歯科用根管治療剤
歯科用根管治療剤は、歯の神経や血管が感染した場合に行われる治療で、根管内の感染を取り除き、根管を清潔にし、詰め物で密閉するために使用されます。保険診療範囲内での根管治療、麻酔をせずに1回の治療辺り5分〜10分ほどで診療されている歯科医院では、ホルムアルデヒド製剤の薬剤を使用していることが多いです。
ホルムアルデヒドは、防腐剤や消毒剤として広く使用されている化学物質であり、抗菌作用があります。歯科用根管治療剤に含まれるホルムアルデヒドは、根管内の微生物を殺菌し、感染の再発を防ぐ役割を果たすとされますが、強烈なにおいに加えて、治療後に痛みが持続します。 短い時間で手際よく根管治療を行うために、よく使用される薬剤です。揮発性有機化合物(VOC)の一種であり、健康被害を引き起こす可能性があります。
欧米など先進国の根管治療では、「基本的に消毒薬は使わない」とされています。日本においてもそのような対応を取られている歯科医院もありますが、根管内の膿が多い場合は代わりに水酸化カルシウムという薬剤が使用されることがあります。これは、殺菌するために強いアルカリ性を示します。通常の使用では問題ありませんが、歯の根の先から多量に溢れた場合は、周囲の組織にダメージを与え、長期的に違和感が継続する可能性があります。
化学物質過敏症が理由で歯医者に診察を拒否された場合の対処法
歯科医師やスタッフの知識や経験不足、医療環境が整わなかったり、使用できる材料や薬品の制約、患者の重症度により救急医療の対応が必要となる可能性がある場合など、化学物質過敏症患者はさまざまな理由で診察を拒否されることがあります。
その場合の対処法をお伝えします。
別の歯科医院を探す
インターネットや地元のコミュニティで口コミや評価を調べ、化学物質過敏症に理解のある歯科医院を探しましょう。また、化学物質過敏症完全対応ではなくとも、アレルギーの知見があると安心です。かかりつけ医に相談するのもひとつの手でしょう。
下記もあわせてご覧ください。
地域の保健所に相談する
化学物質過敏症に対応可能な歯科医院の情報などお持ちでないか、保健所の医療安全支援センターなどに相談してみましょう。化学物質過敏症と伝えると回答がなかったり、断られたりすることがあるため、薬剤アレルギー検査ができる歯科医院はあるかという問い合わせでもいいと思います。
オンラインまたは遠隔診療を検討する
正確な診断や治療計画を立てるためには、通常患者の口腔内を視覚的に評価する必要がありますが、一部の歯科医院では、ビデオ通話などを利用して診断や治療計画を立てることが可能です。一時的な措置や緊急のケースに適していますが、全ての状況で対応できるわけではありませんので、注意が必要です。
大学病院での診察を受ける
化学物質過敏症により歯医者での診察を拒否された場合、大学病院での診察を検討することがあります。大学病院は一般的に教育・研究機関でもあり、多くの場合、専門的な知識と経験を持った医療スタッフが在籍しています。
大学病院はいくつかあるので、自分に合いそうな病院を選び、問い合わせましょう。紹介状が必要な場合も多いので、近くの歯科医院でもらえるか相談しましょう。
化学物質過敏症の歯科治療、大学病院ではどんな検査をする?
化学物質過敏症の歯科治療において、大学病院では以下のような検査が行われることがあります。
- アレルギー検査:歯科治療に使用される材料に対するアレルギー反応を調べる検査です。皮膚テストや血液検査(特に特定の免疫グロブリンE抗体の測定)などがあります。これによって、患者さんが過敏反応を起こす可能性がある特定の物質を特定することができます。
- 化学物質感作パッチテスト:皮膚や口腔内に特定の化学物質を貼り付け、数日間様子を観察します。このテストによって、患者さんがアレルギー反応を示すかどうかが評価されます。
- 麻酔皮下テスト:アレルゲンの特定に使用される検査方法です。このテストでは、患者の皮下にアレルゲンを注射し、その後の反応を観察します。歯科の麻酔薬でどれが使えて、どれが使えないか、一週間ほど検査入院が必要になることがあります。
- 代替材料の検討:化学物質過敏症の方には、代替材料を使用することが考えられます。大学病院では、代替材料の選定や評価を行うことがあります。
これらの検査は、化学物質過敏症の患者さんにとって、安全な歯科治療を受けるために必要なものです。大学病院では、専門の医師や歯科医師が患者さんの状態を詳しく調べ、最適な治療法を提供してくれます。
大学病院での歯科治療
化学物質過敏症の患者が歯科治療を受ける際に不安を感じる場合に、静脈内鎮静法を使用した深鎮静が有用であることが報告されています。ミダゾラムとプロポフォールという薬剤を使用し、酸素を投与しながら患者を鎮静状態に導くことで、吸入麻酔薬や酸素に対する不安やリスクを最小限に抑えつつ、痛みや不快感を軽減することができます。この方法は、化学物質過敏症の患者が歯科治療を受ける際の選択肢として安心感を与えるひとつの治療手段といえます。
参考:歯科治療恐怖症を有する化学物質過敏症患者における静脈内鎮静法による全身管理経験
大学病院だと他の科の医師との連携も取りやすいです。
化学物質過敏症患者の歯科治療の対策と注意点
化学物質過敏症の方にとっては身体に様々な影響を与える可能性があるため、歯科治療は慎重に行われる必要があります。安心して歯科治療を受けられるために、以下の対策と注意点をご紹介いたします。
下見をする
歯科治療には、医療用アルコールや消毒液、レジン、接着剤、歯の削り屑など、様々な化学物質が使用されます。これらの化学物質によるリスクは、特に化学物質過敏症の方にとって懸念材料となりますが、これらの化学物質は歯科医院の待合室や診療室にも残留しているため、歯科医院内に入ることさえ難しいかもしれません。
化学物質過敏症の方は、自身がそのような症状を持っていることを歯科医院に伝え、事前に下見に行ったり、最小限のリスクに抑える方法を相談することが大切です。 一部の歯科医院では、化学物質過敏症の方でも安心して過ごせる室内環境を整備しているところもあります。代替清掃剤の使用や別の待合室の提供、換気など、化学物質過敏症の患者の治療に関するプロトコルを設けている医院もありますので、そのような情報を事前に確認することもおすすめです。
医療従事者に伝えるべきこと
化学物質過敏症の方が歯科治療を受ける際、個々の症状や状態に応じて対策を講じる必要があります。自身の症状や要望を適切に伝えるためにも、信頼できる歯科医師とのコミュニケーションが何より重要です。
予め医療従事者に伝えた方がいいとされる重要な情報は、次のとおりです。
- 化学物質過敏症の診断情報:化学物質過敏症の診断を受けたことを医療従事者に伝えます。診断の結果や診断を行った医師の情報、自覚症状やアレルギー反応、症状の詳細な履歴など、関連する情報を提供します。必要があれば、かかりつけ医と連携してもらいましょう。
- 症状やトリガー物質のリスト:化学物質過敏症の症状や症状の悪化を引き起こす可能性のあるトリガー物質について、具体的なリストを渡します。歯科材料や薬剤に対して過敏反応を示すことがある場合、その情報を医療従事者に伝えます。また、一般的な化学物質、香料、染料、接着剤、殺菌剤などもあわせて伝えましょう。
- 無香料・無臭環境の要求:無香料または無臭の環境を提供するように要求することが重要です。これには、医療用品や洗剤、清掃用品などの香りを含む物質の使用を避けることが含まれます。
- 予約時間の調整:患者が待合室や診療室で他の患者との接触や待ち時間を最小限に抑えることを望む場合、予約時間の調整や個別の診療室の提供を検討します。
- 緊急時の対応:化学物質過敏症の症状が治療中に悪化したり、新たな症状が現れた場合どのような対応や処置が必要か、予め相談しておきましょう。
曝露予防
化学物質過敏症対応の歯科医院なら安心ですが、ごく普通の歯科医院の場合はにおいや化学物質の成分が辛く、曝露してしまう可能性があります。そうならないように事前の準備が大切です。
- 呼ばれるまで家族に待合室にいてもらい、外など別の場所で待機。一人の場合は車などで待たせてもらい、順番になったら呼んでもらうなど、対策をする。
- ビニールキャップ、ビニール手袋、カッパ、靴カバー、防護メガネ、待合室などではノーズクリップや防毒マスクなど、必要に応じて着用する。(レントゲンを撮るときはノーズクリップはNGなので、鼻に綿を詰める等対策を○)
- 椅子に敷く敷物、顔や胸元にかけるタオルなどを持参させてもらう。
- 歯科医院では口を濯ぐ際に水ではなく、口腔洗浄剤(マウスウォッシュ)や塩水溶液(生理食塩水)などを使用する場合があります。使用できない方は自分で常飲している水を持ち込む。
- 顔にかからないよう、ファンデーションを使える方は厚塗りするのもいいでしょう。
- 常時窓を開けるなど換気をしてもらう。
- 超音波洗浄は洗浄剤が入っている場合があるので、必要に応じて水のみで洗浄してもらいましょう。
- 一番ひどい症状が出る薬品は、何度も繰り返し強調して伝えましょう。
歯科治療後の対策
薬剤や麻酔薬を使用した場合、解毒をした方が早く体調が回復します。
- 解毒鍼灸:東洋医学の一部であり、身体の中の毒素を排除することを目的としています。特定の経絡やツボに鍼を刺したり、艾(もぐさ)や特定の植物を燃やして、特定の経絡やツボに熱を与えたり、特定のツボや経絡を圧迫したり、マッサージすることで、身体のエネルギーの流れを調整し、解毒効果を促進するとされています。
- 整体:麻酔をせずに治療をした場合は身体の変なところに力が入りやすいので、整体などで身体を緩めてもらいましょう。
- グルタチオン:グルタチオンが有効な方は、点滴など受けられるのも◎
合うもの合わないものは、ご自身がよくわかっていると思いますので、効果のあるものを試していきましょう。
化学物質過敏症の人が歯科治療を受ける際に緊急時に備えるべき対策
化学物質過敏症の人によっては生死に関わる問題です。緊急時のことも念頭に置きつつ、歯科治療を受けましょう。
1、緊急時の医療情報カードを携帯する:緊急時に役立つ医療情報カードなどを作成し、常に携帯しておきましょう。カードには、自身の化学物質過敏症やアレルギー情報、緊急時の連絡先、使用中の薬剤などを記載するといいです。
2、緊急時の対応策を事前に話し合う:歯科医師と緊急時の対応策について話し合い、事前に計画を立てましょう。例えば、緊急時の症状が現れた場合にすぐに対応できるよう、アレルギー症状に対する薬剤や救急キットを用意しておくことが重要です。
3、症状の変化に注意する:歯科治療中に症状が変化した場合は、すぐに歯科医師に報告しましょう。過敏症やアレルギー反応の可能性があるため、早めの対応が重要です。
さいごに
私たちの身体にはとても高い自然治癒能力が備わっています。
化学物質過敏症の方でも歯科治療を受けることは可能ですが、その歯科医院選びや治療には人一倍大変な思いをしますから、日々の健康に気を配り、砂糖を控える、決まった時間に食事を摂る、よく噛んで食べるなどの食生活を改善し、歯科治療に頼らない生活習慣を身につけることが重要です。
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