2013年5月30日|第183回国会参議院環境委員会第9号|化学物質(フロン)に関する市田忠義議員(共産党)の答弁

化学物質に関する答弁

○市田忠義君

日本共産党の市田です。

フロン法施行から十年以上が経過いたしました。まず最初に、現状と今後の見通しについて改めて確認しておきたいと思いますが、HFCの直近の排出量、CO2換算ですが、これと、我が国の温室効果ガス総排出量に占める割合はどれぐらいになっていますか。

○政府参考人(関荘一郎君)

二〇一一年のHFCの排出量はCO2換算で二千五十万トンでございます。これに対しまして、他の温室効果ガスも含めた我が国の全体の排出量は十三億八百万トンでありまして、HFCは全体の一・六%を占めております。

○市田忠義君

それは、フロン類の基準年とされている一九九五年、そして前年と比較してどうなっていますか。

○政府参考人(関荘一郎君)

HFCの排出量につきましては、基準年、一九九五年でありますけれども、はCO2換算で二千二十万トン、二〇一一年は二千五十万トン、また、二〇一〇年は千八百三十万トンであります。このうち二〇一一年排出量は基準年と比べて一・三%増であり、前年と比べては一一・八%の増となってございます。

○市田忠義君

前年比一一・八%だから、すごい伸び方だと思うんです。
じゃ、一九九五年以降一番排出量が減ったとき、たしか二〇〇五年だったと思いますが、そのときと比較した場合、現在はどういう状況になっていますか。

○政府参考人(関荘一郎君)

御指摘のとおり、二〇〇五年が統計上最も少ない排出量でございまして、年間千五十万トンでございました。また、二〇一一年のHFCの排出量は、先ほど申し上げました二千五十万トンでありますので、二〇〇五年の排出量の二倍程度となってございます。

○市田忠義君

今言われましたように、約二倍というわけですから異常な伸び方ですし、二〇〇五年からは増加の一途をたどっています。
そこで聞きますが、冷媒からの排出量は基準年比でどれぐらい増えているんでしょう。

○政府参考人(関荘一郎君)

HFCのうち冷媒からの排出量というのは、基準年、一九九五年でありますけれども、比べまして二三〇〇%増ということになってございます。

○市田忠義君

これだけ増えた主な理由は何ですか。

○政府参考人(関荘一郎君)

主な理由は、フロンから代替フロンに製品中の冷媒が変更になりまして、そこからの排出だと考えております。

○市田忠義君

もう今後追加的な対策を実施しない場合、二〇二〇年のHFC等の代替フロン等三ガスの排出量の見込みと、我が国の温室効果ガス総排出量に占める割合の見込みはどれぐらいになるでしょうか。

○政府参考人(関荘一郎君)

今後追加的対策を講じない場合、二〇二〇年におけます代替フロン等三ガスの排出量は現在の二倍以上の五千万トン弱になると見込まれております。この五千万トン弱というのは、基準年の排出量に比べまして約四%程度に相当するものでございます。

○市田忠義君

先ほどの説明で、どうしてこれだけ増えたかということに対して、オゾン層破壊物質であるHCFCの代替としてHFCへの転換が進んだと、それに伴ってCO2排出量が増加したという御説明だったと思うんですが、しかし、HCFCは地球温暖化係数が一八一〇で、代替物質の新冷媒として転換が進んだHFCは、例えば業務用エアコン等に使われたものは地球温暖化係数が三九二二、家庭用エアコン等に使われたものは地球温暖化係数が二〇八八ですから、非常に高いと。
 目先の利益だけ考えて、もうけのためだったら何をやってもいいという考え方は、やっぱり私は、環境にとってはもちろんのこと、企業の健全な発展にとっても良くないと思うんです。政府は、フロン製造メーカー、日本フルオロカーボン協会が規制された物質からの代替として温暖化を一層進める物質にシフトするということを事実上許して、それを長年にわたって使い続けるということに目をつぶってきたと思うんですよね。
 この問題の重大性、これもっと深刻に受け止めるべきだと思うんですが、これは政治的な問題ですから、大臣、こういう事態になっていることについてどのように受け止められているか、認識だけお聞きしたいと思います。

○国務大臣(石原伸晃君)

これもう午前中の質疑でも出ましたように、一九九五年にオゾンホールを破壊するものをまず規制して、次、二〇二〇年までに次のものを規制する、そしてその次の段階として代替フロンと、段階的にやらざるを得なかった、利便性の生活を継続するためにはこのようなことになってしまったというのが現実ではないかと考えております。

○市田忠義君

政府は、オゾン層保護対策としてフロン系物質の大量生産、大量消費と、こういう根本問題に手を付けることなくそのまま続けてきたと。そして、フロン製造業界がその場しのぎで代替物質としてHFCに転換していくという安易な道を許してきたと。その後もフロン製造メーカーに対して何ら規制を掛けてこなかったと。私は、これが今の重大な事態を招いているわけで、この問題は以前から指摘されてきた問題だったというふうに思うんです。
 ライフサイクル全体の取組というのは当然必要なんですが、私はこれまでのメーカー言いなりの取組を反省して、製造段階での大幅削減に、先ほども他の委員からも指摘がありましたが、製造段階での大幅削減に着手しないと駄目だと思うんですが、大臣、この辺、認識はいかがでしょう。

○国務大臣(石原伸晃君)

先ほど、段階的な措置をとったのでこのような結果になってしまった、やむを得ないというような御答弁をさせていただいたんですけれども。その一歩先にはやはり代替フロンの、オゾン層破壊効果はないものの、温室効果ガスとして非常に大きいものがけしからぬということは多分一致していると思いますので、これに代わるやっぱりノンフロンへどういうふうに次一歩進めていくのかということが非常に大切な観点ではないかと、今の委員の御議論を、数字の増加ですね、これを聞かせていただきまして強く思ったところでございます。

○市田忠義君

計画的削減のために取り組むべき措置というのは、いわゆる判断基準、判断の基準、これはたしか政令で定められるわけですね。これにやっぱり大きく委ねられていると思うんです。
 二〇一一年分の経団連の自主行動計画の評価・検証というのを読んでみますと、フロン製造業界団体である日本フルオロカーボン協会はこう言っているんですね。単純に地球温暖化係数GWPが大きいことを理由にした脱フロン化の動きは合理性を欠くと、総合的な性能ではHFCは極めて有用な製品だと、こう述べているわけです。私は、業界としてはなるべく安く生産できて、一度開発したらその物質はなるべく長く使いたいと、これは企業の論理、資本の論理からいえば、ある意味では当然というか、そこに縛られると思うんですけれども。
 これも先ほど同僚議員からも指摘がありましたが、やっぱり企業には社会的責任というのがあるわけで、それを果たさせるためにはやっぱり国がルールをきちんと決めて一定の規制をすることが私、不可欠だと思うんです。幾ら生産段階から網を掛けたといっても、経済産業大臣が関係業界の意向を酌んで定める基準というのでは、到底大幅な削減は私できないと思うんです。
 そこで、石原環境大臣にお聞きしたいんですけれども、やっぱり政府が削減のスケジュールをきちんと策定をして、生産量のキャップを決めて、必要な目標を示して排出削減を進めるべきだと思うんですが、その点についてはいかがでしょう。

○国務大臣(石原伸晃君)

今の委員の御指摘は、国が具体的な削減計画を示さなければ物事の本質的な解決に至らないという御趣旨だと思うんですけれども、今回の改正案において、ガスメーカー等々に対して温室効果がより低いフロンへの転換を進めるための目標を示させていただきまして、その遵守を求める新たな規制というものが今回は入っているわけであります。これによってどういうことになるのかといいますと、実質的にはフロン類の新規製造、輸入量の削減というのは当然その数値目標があるわけですから、私は減ってくることになるんだと思います。
 さらに、機械メーカー、それに対してはノンフロン製品、先ほども本質的な解決にはやはり利便性だけではなくてノンフロンに持っていくということが重要であるというお話もさせていただきましたけれども、転換するということをする促進規制ですか、こういうものを導入しようというようなことも盛り込ませていただいております。こういうものを積み上げていって、委員御指摘のように、HFCを結果として削減を図ってまいりたいというのがその法律の組立てでございます。

○市田忠義君

私が言いたかったのは、HFCをやっぱり生産段階で、単なる判断基準に基づいて自主的にということじゃなくて、一定の強制力が働かなかったら生産量は減らないんじゃないかということを言いたかったわけです。
 やっぱりこれまで産業界の自主的取組に任せてきたことが今の排出量急増という結果を生んでいるわけで、例えば国連環境計画は、今後の予想どおりHFC排出量の増加が進むと、二〇五〇年時点でCO2の大気中濃度を四五〇ppmに安定化できたとしても、その努力分をほぼ相殺するだけのHFC量の増加を予想していると、こういうふうに述べています。
 アメリカの国立科学アカデミーの研究によれば、追加対策を取らなかったら、現在温室効果ガスの二%程度を占めるフロンガスは二〇五〇年には九ないし一九%を占めることになると、こういう試算もあります。
 国際的には、モントリオール議定書の下で、HFCの生産・消費規制を導入すべきという、議定書改正提案が北米の三か国等から提出をされております。
 私は、関係業界の主張ばかりに耳を傾けるんではなくて、深刻な地球温暖化の見通し、国際的な流れも見据えて生産量削減を強力に進めないと駄目だということを指摘しておきたいと思うんです。
 フロンの生産が続くとフロンを使用した製品も使い続けることになると、これは当然だと思うんですけれども、国際的には、二〇一二年六月にリオデジャネイロで開催された国連持続可能な開発会議で、HFCの段階的削減が合意されました。EUではフロンガス規制の見直し検討が今進められております。
 欧州委員会案では、フェーズダウン計画として、HFCを大量に取り扱う事業者に対して段階的な削減を求めていますが、二〇二〇年、二〇三〇年の削減目標はどうなっているか、分かっていたら教えてください。

○政府参考人(関荘一郎君)

昨年十一月に公表されましたEUの弗素含有ガスの温室効果ガスの削減の規制案におきましては、二〇一五年を基準年としまして、二〇二〇年で三七%削減、二〇三〇年では七九%削減を目標としていると承知しております。

○市田忠義君

前回のこの法律の改正ではフロンの回収率を三割から六割に引き上げるとしていたけれども、現在も、午前中の議論でも明らかなように回収率は三割のままであります。
 削減見込みを幾ら言っても、これまでの実績を見ればとても信用できないと思うんです。全体としての排出削減は重要だが、EUのFガス規制で提案されているようなフェーズダウン計画ですね、これは市場に出す段階、上市供給量というそうですけれども、市場に出す段階の削減。我が国では旭硝子、ダイキン工業など八社で構成されているフルオロカーボン協会全体で、一九九五年以降、実に七十五万トン以上ものHFCを出荷していると。削減見込みを裏付ける強力な規制を掛けなかったら、この先もどんどん生産し続けていくことになるのは私は明らかだと思うんです。
 EUのFガス規制の提案では、製品ごとに市場に出すことそのものを禁止する上市禁止の内容が具体的に示されています。密閉型の業務用冷凍冷蔵機器については、二〇一七年一月一日よりGWP二五〇〇以上のHFCの使用を禁止、二〇二〇年一月一日よりGWP一五〇以上の使用を禁止することになっています。
 技術開発の進展を見ながらというのは当然ですけれども、私は、日本の技術力からすれば、EUのように必要な目標を示して、そこに向けて努力していくというのが本来の在り方だと思うんですが、これは大臣、もし認識あれば、こういうEUのような立場に立つべきじゃないかという点についてはいかがでしょう。

○国務大臣(石原伸晃君)

目指す方向は違わないと思うんですが、やはりキャップを掛けて性悪説に立ってそれを規制していけという考え方と、やはりいろいろな施策と規制と併せて生産量の削減を共にやっていこうと、これ両方とも多分目指すところは最初一緒だと言ったのは、利便性のいい生活をしていくためにこれを使っているから作る側も売っているということが根底にあると思いますんで、今後どういうような技術がまた新しいものが出てくるか、そういうことも含めて見ていってしっかりとしたものにしていきたい、こんなふうに考えております。

○市田忠義君

私は企業性悪説に立っているわけじゃありません。資本主義社会である以上、やっぱり利潤第一主義にこれは陥らざるを得ない。競争社会ですから、よそよりも少しでも安いものを大量に使ってもうけようと思うのは、これは資本の論理からいって当たり前だと思うんです。だから、一定のルールが決められて、やっぱり一定の規制がなければ、それは守ろうとしないのは当たり前だと思うんですね。ヨーロッパなんかでは、同じ資本主義でもルールある経済社会と言われて、日本ほどノンルールの国はないと言われているぐらいなんで、私はそういう一定のルールが必要じゃないかということを言っているわけで、何か企業がもうけたら悪いとか、企業性悪説に決して立っているわけではない。一定のルールの下での共存共栄を図るべきだというのが我が党の立場だということも申し上げておきたいと思います。
 最後に、京都議定書第二約束期間において削減対象に追加された温室効果ガスについてお聞きしたいと思います。
 HFC245faとHFC365mfc、これは断熱材や発泡用途、洗浄剤・溶剤分野等で使用されていると聞いています。また、半導体・液晶製造等分野で使用されているNF3がありますが、これらの排出量は把握しておられるんでしょうか。

○政府参考人(関荘一郎君)

まず、HFCの二物質でございますけれども、残念ながら現時点では、私ども、業界も含めて把握してございません。
 もう一方の三弗化窒素の国内の総排出量につきましては、今後国による調査が必要ではございますけれども、業界団体の調査がございまして、二〇一〇年における三弗化窒素の排出量は、CO2換算で、半導体製造時で二十万トン、液晶製造時で十五万トン、こういう報告がございます。

○市田忠義君

日本のクリーニング業界でここ数年、削減対象に追加されたガスであるHFC365mfc、通称ソルカンドライというそうですけれども、これを使った洗浄機を導入する動きが加速していると言われています。いろんな宣伝物を見てみますと、地球環境に優しい溶剤と、こういううたい文句で大宣伝されているわけですが、温暖化係数は百年値で七九四、二十年値で二九二〇と非常に高いんですね。二〇〇九年に石油溶剤を違法に使用していた工場が全国で一斉に摘発されたと。これを受けて転換が一気に進み出したというふうに言われているんですが、環境省は、そのクリーニング業界におけるHFC365mfc、この使用実態というのは把握されているんでしょうか。

○政府参考人(関荘一郎君)

現時点では把握してございません。

○市田忠義君

もし大臣に認識があればお聞きしたいんですけれども、クリーニングの溶剤の問題はいろんな課題があるかもしれないんですけれども、温暖化係数が高いということについて一切触れずに、地球環境に優しいと言って宣伝することに私問題があるんじゃないかと思うんです。
 対象ガスに追加されたということもあり、省庁の縦割りではなくて政府全体の取組として、少なくとも、これたしか税制上の優遇措置も、これは厚労省の方でしょうけれども、あるらしいんですけれども、やっぱり実態を把握して、問題がある場合は適切な対応が必要じゃないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。

○国務大臣(石原伸晃君)

今の問題の御指摘、私もそのとおりだと思います。本法案の質疑が終わりまして成案を得ることができましたら、施行までの期間がございますので、その間に今のクリーニング溶剤の問題も含めて、また税制の問題も含めてしっかりと検討していかなければならない課題と受け止めさせていただいております。

○市田忠義君

時間になりましたので終わりますが、フロンは、他の委員も言われたように、人体に無害、燃えない、気化しやすいという特性から、夢の物質ということで大量に使われてきましたが、オゾン層破壊、そして地球温暖化という人類の生存を脅かす深刻な事態を招きつつあります。
 長期的にフロンを使い続けていく選択肢がないことは政府も認めておられるところですし、国際的な流れも同じだと思うんです。産業界の可能な範囲での取組に任せていては必要な削減は進まないと。これはこの間の実態が示しているわけで、やっぱり先ほど言ったように、利潤第一主義が様々な社会的害悪として現れるわけで、この問題もその一つだと。将来世代にやっぱり安心して暮らせる環境を手渡せるようにしていくというのは、これは政治的な立場超えて誰もが一致できる当然のことなので、今回の法改正をやっぱり実効ある削減に結び付けていくということは極めて重要だということを指摘して、終わります。

引用:国会会議録検索

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